著者
飯田 善郎
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.231-248, 2014-03

所得再分配における分配者、被分配者の選好を調査するために、社会人を対象にしたアンケート調査と学生を雇用した被験者実験の両方を行った。ディクテーターゲームに類似する条件を参加者に提示する形でおこない、調査手段から生じる選好の違いと共通点を検証している。結果としては、被験者実験では分配者が表明する被分配者への分配額はアンケートに比して少なく、また被分配者が分配者に求める分配額はより多くなる傾向が見られた。より詳細に検討すると、アンケート回答において、自分が豊かで分配する側なら多くの分配をする代わりに貧しければ多くの被分配を求める、または、自分が貧しい時にはあまり分配を求めない代わりに自分が豊かな時も分配したくないという、一方で利他的で他方で利己的な選好が多く観察された。このことから、単純に被験者実験が報酬という金銭的誘因から参加者の行動をより利己的な方向へ誘導し、それがないアンケート調査はより規範的な回答を導きやすいとは言えないことが示された。こうした回答傾向になる理由は今後の検証の課題となる。さらに格差発生の要因が運、努力、才能のいずれか一つのみと仮定した場合の分配の選好を尋ねた。その結果アンケートにおいては所得格差が運の要素で発生する場合には、努力や才能で所得格差が発生する場合よりも、分配者の立場でも被分配者の立場でもより多くの再分配を選好することが示された。これは多くの被験者実験で確認されている傾向である。しかし本論で行った被験者実験ではサンプル数が充分でないためか、アンケートと異なりその傾向は確認されなかった。
著者
古谷 裕一郎 寺田 卓郎 宗本 義則 飯田 善郎 三井 毅
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.573-577, 2016 (Released:2016-09-30)
参考文献数
10

精神発達遅滞患者や認知症患者における異食の報告例は散見される.今回,ビニール手袋の異食により小腸閉塞および穿孔をきたし,手術を要した1例を経験したので報告する.患者は出生時より精神発達遅滞がある17歳,男性.突然の嘔吐を主訴に近医を受診し,腸炎と診断された.しかし,症状の改善はなく腹痛も出現したため,翌日に当院受診となった.腹部単純CTにて回腸内に直径約50mmの低吸収の塊を認め,異物が疑われた.過去に布団の綿の異食歴があり,異物は布団の綿が疑われた.自然排泄を期待し経過観察の方針としたが症状の改善はなく,7日間の経過観察ののち手術を施行した.腹腔鏡にて観察すると回腸に閉塞部を認めた.同部に異物が嵌頓し,腸管は菲薄化し穿孔が疑われたため,小切開を追加し小腸部分切除術を施行した.異物は2枚のビニール手袋が一塊となったものであった.術後は腸管麻痺や創部感染を併発したが,術後28日目に退院した.