- 著者
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室田 知香
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.12, pp.11-24, 2007-12-10 (Released:2017-08-01)
『源氏物語』の所謂第二部における、柏木の恋に関わる物語には、『伊勢物語』の業平の像を思わせるような一連の類同的表現群や、恋ゆえの離魂と死を思わせる表現など、多数の引用的表現が用いられている。が、こうした表現群にはしばしば、一種屈折した論理が伴われ、柏木をただ既存の物語伝統に添う恋の英雄に重ねきるのではなく、しだいに柏木像との間の分裂を露呈するものとなっている。その過程の考察を通し、第二部の叙述の性質と展開原理とを問い直す。