著者
室谷 寛 後藤 忠俊 笹本 興児
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.197-200, 1968-02-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
2

塩基性炭酸マグネシウム( 炭マグと略称) は4MgCO3・Mg(OH)2・4H2O の化学組成であリ, つぎの工程でつくられる。すなわち, (a) 塩化マグネシウム( または硫酸マグネシウム) 溶液と炭酸ナトリウム( または炭酸アソモニウム) 溶液との反応, (b)炭酸水素ナトリウム溶液( または正炭酸マグネシウム懸濁液) の熱分解。本研究では, これら反応における生成物の挙動をX 線分析により調べた。上述の反応では, 共通して中間体ができる。(a) では, 初めに無定形物質, つぎに中間体, 最後に炭マグが生成する。(b) では無定形物質は得られない。無定形物質の安定性は溶液の濃度と温度に依存するらしい。中間体は80℃ 以下の温度で生成しやすい。このものはAB またはABC 型の積層変化を起す層構造であることが推定される。また中間体は脱水により炭マグに変わるとき, その( 00l ) 面だけが変位するので, 炭マグ類似の構造と考えられる。炭マグ製造工程において, 上の諸現象は製品の品質に直接影響する。
著者
後藤 忠俊 室谷 寛 笹本 興児
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.1172-1175, 1965

塩基性炭酸マグネシウム(炭マグと略称)の製造では,良質の製品を得るために結晶状態が重視される。これは結晶化の過程に直接関係している問題である。塩化マグネシウムと炭酸ナトリウムとの80℃ 程度の溶液反応で,炭マグを生成するとき他の物質が副生する。これらの物質として,正炭酸マグネシウムが知られているが,この外に(1)無定形物質,(2)従来未知のX線回折を示す物質がある。反応の初めに無定形物質が,遅れて(2)の物質が生成し,炭マグに同伴する。このような場合,炭マグ結晶は[001]方向に余り成長しない。常温反応では正炭酸マグネシウムが生成するが,希薄溶液の条件では無定形物質が得られる。これは徐々に変化して上の(2)の物質を含む複雑な状態となる。80℃ 反応の副生物は当量反応で高濃度の場合に避けられる。また熟成によって炭マグに変化させられる。しかし,この副生物は炭マグの結晶化に直接あるいは間接に影響するらしい。