著者
久保 快哉 室谷 洋司
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
日本鱗翅学会特別報告
巻号頁・発行日
no.3, pp.67-77, 1967

1) 1965年4月,中華民国台湾省において,ヒョウマダラTimelaea maculata formosana Fruhstorferの幼生期の観察を行なった。野外において生態観察を行なう一方,材料を飼育することによって幼生期の形態についても研究した。2) 産卵は概して背丈の低いニレ科のタイワンエノキCeltis formosanaの葉に1卵ずつ行なわれる。幼虫は静止する際に胴部をゆるやかなN字形に彎曲させる習性を有する。3) 卵および若齢幼虫からの飼育は,室内で行なったが,卵期約6日,幼虫期約30日,蛹期約14日であった。4) 幼生期の形態について判明したことは,(a)卵の概形はコムラサキ亜科Apaturinaeのものと大差ない。約25本の隆起条がある。産卵直後の卵の色彩はクリーム色である。径0.92mm,高さ0.94mm。(b)終齢(5齢幼虫はナメクジ状であり,腹部第3~6節でもっとも肥大する特異な形態を有する。体色は淡緑色で,亜背線と気門線は黄白色であり,他に斑紋や突起はない。体長29mm位。(c)蛹の色彩は淡緑色で隆起部分は黄褐色をおびる。全面に白粉を装う。体長18mm位。左右に著しく扁平であり,他のコムラサキ亜科の蛹と比較して小さく且つ,背稜は非常に凹凸が激しい。