- 著者
-
宮井 ふみ
石塚 盈代
- 出版者
- The Japan Society of Home Economics
- 雑誌
- 家政学雑誌 (ISSN:04499069)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.6, pp.413-417, 1968
1. 実験範囲内において酵素濃度の対数と肉の硬度はある範囲内において直線的な関係にあり、硬度4~5を与えるロース肉程度の軟化には肉片10gについて酵素量2,500 P. U./ 10mlが適当である。<BR>2. 室温 (16~28℃) における酵素作用時間の影響は、作用時間2時間までは急激に肉軟化が増大し、作用時間3時間以降変化がみられない。実際の調理にあたっては、30分~1時間が適当と考えられる。<BR>3. 酵素作用は溶液として浸漬する方法と、乳糖を賦形剤として粉体をまぶす方法との間に差異は認め難く、実用面では粉体の使用が有利と考える。<BR>4. 可溶性蛋白、ペプタイドの生成量値は、使用酵素量増加と共に増加し、官能検査で得られた測定値と一致するため、肉軟化は肉蛋白の分解によるものと考える。<BR>5. 調味料のみによる肉の硬度は、調理至適濃度範囲においていずれも7以上で硬く、充分でない。常用食塩量ではパパインの活性低下を起さない。他の調味料も酵素の肉軟化に殆んど影響を与えない。<BR>6. 煮物、スキヤキ調理において酵素量250 P. U./10ml作用後、調味料を用いることにより、良好な風味と、硬度4.5~5.0のロース肉と変らない軟らかい肉を得ることができた。<BR>本研究は第16回日本家政学会に報告したが、その後、別所のくもの巣かびの産出する酸性プロテアーゼの肉軟化作用および旨味生成作用が、植物酵素に比較して良いとの報告を知った。調味添加剤として有害作用をもつ物質の混入の危険性ならびに使用上の簡易化などを考慮しながら、日本食における肉調理に酵素剤を広く実用化する目的で、更に私共は研究を続けている。