著者
宮坂 宥峻
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.1-19, 2018 (Released:2019-03-30)
参考文献数
20

本論文では『初会金剛頂経』降三世品における思想背景を他経典との関連を中心に考察を行った。まず「理趣経」類本との関係を探り、『理趣経』との成立関係についても私見を述べた。次に栂尾祥雲によって指摘されたDevīmāhātmyaとの関係について考察を行った。また両経典において重要となるスンバとニスンバについて、仏典には降三世品以前から既に説かれており、特に「降三世明王の大呪」の前身が『蘇悉地羯羅経』に説かれていることから、栂尾氏が主張するDevīmāhātmyaから降三世品へという成立の順序に対して異見を示した。最後に『金剛手灌頂タントラ』における諸天降伏との関連について考察を行った。降伏のプロセスなど類似している点がある一方、諸尊の数やグループなど、降三世品において発展的に整理が行われていることが理解された。 以上の内容を総じて降三世品の思想背景について考察を行った。