著者
大塚 玲 宮坂 由喜子 神園 幸郎
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.13-22, 1991-06-30

優れた暦計算能力をもつ自閉症者4症例に対して、その暦計算の処理機構について検討した。その結果、次のような知見を得た。1.本研究で対象とした4症例すべてにおいて、優れた記憶機能が介在していた。したがって、暦計算能力の出現の背景には優れた記憶能力の存在が想定された。2.暦計算能力の差異性を規定しているのは、暦の記憶範囲における違いもさることながら、暦の規則に関する知識量および暦の規則を利用した演算アルゴリズムの洗練度合に負うところが大きい。3.上記の観点から暦計算者の方略は、全面的な記憶依存による記憶依存型、簡単な暦の規則の適用によって記憶範囲外の年代を補う規則利用型、暦の構造から独自の演算方略を編み出し、利用するアルゴリズム主導型の3タイプに類型化された。