著者
大塚 玲 宮坂 由喜子 神園 幸郎
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.13-22, 1991-06-30

優れた暦計算能力をもつ自閉症者4症例に対して、その暦計算の処理機構について検討した。その結果、次のような知見を得た。1.本研究で対象とした4症例すべてにおいて、優れた記憶機能が介在していた。したがって、暦計算能力の出現の背景には優れた記憶能力の存在が想定された。2.暦計算能力の差異性を規定しているのは、暦の記憶範囲における違いもさることながら、暦の規則に関する知識量および暦の規則を利用した演算アルゴリズムの洗練度合に負うところが大きい。3.上記の観点から暦計算者の方略は、全面的な記憶依存による記憶依存型、簡単な暦の規則の適用によって記憶範囲外の年代を補う規則利用型、暦の構造から独自の演算方略を編み出し、利用するアルゴリズム主導型の3タイプに類型化された。
著者
神園 幸郎 宮里 秀太郎 中 龍馬 Kamizono Sachiro Miyazato Syutaro Atari Ryuma
出版者
琉球大学教育学部附属発達支援教育実践センター
雑誌
琉球大学教育学部発達支援教育実践センター紀要 (ISSN:18849407)
巻号頁・発行日
no.2, pp.33-45, 2010

本研究は広汎性発達障害のある児童生徒に出現するファンタジーの没入現象について、その特徴と出現の実相を検討した。小中学校に在籍する広汎性発達障害のある児童生徒の担任教師や特別支援教育支援員を対象に、学校場面で出現する児童生徒のファンタジーへの没入現象について聞き取り調査を行った。収集されたエピソードの分析から、次に示す5つの知見を得た。まず、第1にファンタジーの内容はそれぞれの事例に特有なこだわり行動にその起源があった。第2に、ファンタジーの表出形態は特定の人やモノに向けた自問自答様の言語的表出、描画中の独言、動作による表出などさまざまな形態が確認された。第3に、ファンタジーは、現実とファンタジーが一体化した段階から、現実とファンタジーが分離し、ファンタジーを対象化する段階へと発達的に変化した。第4に、ファンタジーへの没入現象には、対人関係に伴う不安や不快を払拭するための防衛機制的な出現の契機と、対人関係の安定を前提として出現する契機の2つが認められた。第5に、ファンタジーへの没入現象は、広汎性発達障害に見られるタイムスリップ現象とは質的に異なるとの見解を得た。以上の知見について、広汎性発達障害の想像性に纏わる先行研究との関連で考察された。
著者
神園 幸郎
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

高機能広汎性発達障害児に見られるファンタジーの没入現象について、その特性を明らかにした。第一に、高機能広汎性発達障害児のファンタジーは、対象児に固有なこだわり行動に起源を持つことが明らかになった。第二に、彼らのファンタジーは実体験の再現もしくはそれを基に再構成されたものであり、想像上の存在や架空の物語展開といった虚構性は極めて薄く、その点で定型発達児のファンタジーとは大きく異なることがわかった。