著者
宮岸 真
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

RNAiは非常に効果的な遺伝子抑制法であり、簡便で、効果の高い遺伝子機能の解析法として、注目を集めている。しかし、最近、siRNAによって、非特異的な抑制効果であるインターフェロン応答が励起されることが報告され、その詳細な解析が急務となっている。本研究課題では、ベクター系によって発現されるsiRNAによるインターフェロン応答の解析を行うと共に、二本鎖RNAによって誘起されるインターフェロン応答のパスウェイの解析を行った。初年度、数種類のsiRNAベクターのインターフェロン反応を、2',5'オリゴアデニレースシンセターゼ(OAS)の発現により調べたところ、どれもインターフェロン応答を起こしていないことが分かった。そこで、次に、より長い二本鎖RNAを発現するベクターを作製し、それによって生じるインターフェロン反応について解析を行った。発現系としては、tRNAプロモーターおよび、U6プロモーターを用いた2つの発現系を使用した。また、インターフェロン応答は、PKRのリン酸化、発現量をウエスタンブロッティングにより解析すると共に、OASの発現をリアルタイムPCRにより、定量することにより調べた。その結果、50、100塩基対を発現するtRNA連結型のベクターは、PKRのリン酸化、発現量、OASの発現量を増加させることから、インターフェロン応答を誘起していることが分かった。また、二本鎖RNAのセンス鎖にミューテーションを挿入することにより、このインターフェロン応答を軽減することができることが判明した。RNAiライブラリーを用いた二本鎖RNAによるアポトシスパスウェイの解析に関しては、数百のシグナルトランスダクションの遺伝子に関して、検索したところ、今回新たに、JNKからミトコンドリアに至るパスウェイおよび、MST2、PKCαからERK2に至るパスウェイが関与していることが分かった。