著者
宮島 大一郎
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

観賞植物類においては主に花が育種の対象になり生殖が影響を受けている場合が多い.このことよりビンカ,パンジー,プリムラ・ポリアンサについて植物体構造変化による種子生産栽培を試みた.これらの生殖生態の解明を行った結果,いずれの植物種もミツバチが受粉媒介する典型的な植物と異なった生殖における生態を持っており,また受粉媒介昆虫の確保がいずれも難しいことがわかった.これらの植物において開花や種子稔実の負担を調べるためつぼみを摘除,開花のみさせる,あるいは人工授粉により全ての花を受粉させることにより種子生産量,植物体の生育を比較した.その結果,つぼみ摘除はいずれの植物においてもresource生産構造の生育を促進した.受粉後の花弁摘除はプリムラにおいてはresource消費軽減の有効な方法と考えられた.一方パンジーでは受精の成功の有無に関わらずほぼ枯れるまでの長期間に渉って受粉受精の能力があるため花弁摘除は昆虫訪花を排除して逆効果になることがわかった.いずれの植物においても花弁摘除がresource生産構造の遮光の軽減になるかどうかは明らかで無かった.ビンカにおいては開花の負担は小さく,また花によるresource生産構造への遮光の影響も小さかった.ビンカにおいては訪花昆虫の種子生産への寄与が大きく,また能動的自花受粉のメカニズムにより種子稔実における問題は小さく収穫労力の改善が必要と思われた.いずれの植物についても初期につぼみ摘除をする方法を試みた結果,つぼみ摘除終了後大きく肥大したresource生産構造に多くの花が集中して咲くことがわかり,受粉,収穫労力の集中化の点で有効な方法と考えられた.