著者
佐々木 昭彦 藤井 明 宮島 正博
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.17-20, 2008-01-15 (Released:2009-09-11)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

症例は24歳,男性.既往歴は10年前よりSLE,ループス腎炎,ネフローゼ症候群の診断でプレドニンを長期服用していた.平成17年12月6日,突然の胸痛を訴え,造影CTでは弓部に最大径63mmの弓部大動脈瘤と前縦隔に血腫を認め,弓部大動脈瘤破裂(oozing type)と診断した.下行大動脈も5cmに拡大していた.降圧療法後,12月8日に脳分離併用上行弓部全置換術を施行した.術後11日目より縦隔ドレーン液が混濁し,13日目正中創および胸骨が離開した.その間37度台の微熱が継続し,WBC 14,200/μl,CRP14.6mg/dlに上昇したが,2回の縦隔ドレーンの細菌培養は陰性であった.1週間創開放洗浄し WBC 7,900/μl,CRP1.8mg/dlに低下し,12月29日大網充填創閉鎖を施行した.その後は順調に経過し,1月25日退院した.平成18年6月9日朝,突然左胸痛を訴え入院,下行大動脈が60mmに拡大,降圧療法により症状が落ち着いたため予定手術としたが,3日目激しい背部痛を訴えショック状態となり破裂死した.破裂を危惧して緊急手術もしくはステントグラフト治療を考慮すべきであった.