著者
金子 立 宮崎 一興
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1479-1488, 1993-08-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

射精不能者に対して, さまざまな人工的精液採取法が行われているが, Brindley 法とパルス電流を用いるように改良した Seager 改良法による電気射精を, 脊髄損傷40例, 直腸癌根治術後の射精不能例1例に対して行い, その有用性を検討した. Seager 改良法では, 刺激に際して患者に与える電気エネルギーを減じるため, 正弦交流にかえ両極性のパルス電流を用いた. Brindley 法では18例中11例から精子を回収し, Seager 改良法では29例中24例から精子を回収した. 直腸癌根治術後の射精不能例1例も Seager 改良法により精子を回収することができた.電気射精の副作用としては, 自律神経過反射と疼痛がみられた. 自律神経過反射は, 刺激の中止により速やかに消失し, この点でネオスチグミンのくも膜下腔注入法より安全な方法と考えられた.脊髄損傷例の精液所見では, 受傷後経過期間とともに回収できた総精子数は減少する傾向がみられ, 運動率は慢性期のみならず, 受傷後1ヵ月以内の急性期の症例においても低下がみられた. したがって, 脊髄損傷における精巣, 精巣上体等の障害はかなり早期からおこる可能性が示唆された.
著者
金子 立 宮崎 一興
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1479-1488, 1993
被引用文献数
4 2

射精不能者に対して, さまざまな人工的精液採取法が行われているが, Brindley 法とパルス電流を用いるように改良した Seager 改良法による電気射精を, 脊髄損傷40例, 直腸癌根治術後の射精不能例1例に対して行い, その有用性を検討した. Seager 改良法では, 刺激に際して患者に与える電気エネルギーを減じるため, 正弦交流にかえ両極性のパルス電流を用いた. Brindley 法では18例中11例から精子を回収し, Seager 改良法では29例中24例から精子を回収した. 直腸癌根治術後の射精不能例1例も Seager 改良法により精子を回収することができた.<br>電気射精の副作用としては, 自律神経過反射と疼痛がみられた. 自律神経過反射は, 刺激の中止により速やかに消失し, この点でネオスチグミンのくも膜下腔注入法より安全な方法と考えられた.<br>脊髄損傷例の精液所見では, 受傷後経過期間とともに回収できた総精子数は減少する傾向がみられ, 運動率は慢性期のみならず, 受傷後1ヵ月以内の急性期の症例においても低下がみられた. したがって, 脊髄損傷における精巣, 精巣上体等の障害はかなり早期からおこる可能性が示唆された.
著者
高坂 哲 宮崎 一興
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.824-831, 1988-05-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
21

脊髄損傷患者114例を対象に, それらを第9胸髄-第10胸髄を境に上位一下位, および麻痺の程度により完全麻痺-不全麻痺で分け上位完全麻痺, 下位完全麻痺, 上位不全麻痺, 下位不全麻痺の4群で性機能について問診および勃起力に関して陰部皮膚温度から検討した. 症例は16歳から58歳 (平均34.2歳), 罹患期間は平均3年4カ月. 問診結果は, 上位完全麻痺群で反射性勃起90.1%, 性交可能72.5%, 下位完全麻痺群では, 射精可能15.3%と良好であったが, 精神性勃起, 極致感はいずれも10%以下であった. 性的刺激 (視覚的性的刺激, V. S. Sと略す. および機械的陰茎刺激P. M. Sと略す) に対する陰部皮膚温度曲線は, 5つのパターンすなわち, 正常型 (Normo-response), 反射型 (Reflex-response), 低反応型 (Hypo-response), 混合型 (Mixed-response), 無反応型 (Non-response) に分類して検討した. 上位完全麻痺群では, 反射型88.2%, 上位不全麻痺群で混合型40%, 正常型33.3%, 下位完全麻痺群で無反応型38.4%, 低反応型30.7%, 下位不全麻痺群では正常型63.6%という結果であった.また, 各群での陰部反応皮膚温度と勃起の程度は良く相関していたが, 下位不全麻痺群の5例 (22.7%) に皮膚温上昇を認めるにもかかわらず, 勃起が認められなかった. このことは, 勃起現象が血流のみではないことを示唆するものと考えられた.