著者
宮崎 佳子
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

【研究目的】耳や目などから入る情報が皆無に等しい盲聾二重障害生徒は、指導内容および、周囲の状況説明を含む授業内容のすべての伝達を、通訳介助者の『視覚及び聴覚に頼らない様々な手段』(例えば、触手話、指文字、指点字、身体への接触による合図)によって行っている。通訳介助者は授業者と連携し、盲聾生徒と授業者、生徒同士のコミュニケーションを補償しながら、指導内容と言葉をピタリと呼応させるという重要な使命を持つこととなる。「家庭科教育」を例として、効果的な通訳方法、指導方法の検討をすることによって盲聾二重障害生徒の社会生活スキルを高め、社会生活の自立支援を図ることを目的とする。【研究方法】(1) 家庭科の授業内容が理解できているかについて、生徒と通訳介助者両方の聞き取り調査を行い指導内容、通訳内容を検討する。(2) 授業の内容を生活の中に実践的に反映させている、またはしようと試みているか生徒と通訳介助者両方の聞き取り調査を行う。(3) 授業の内容を生活の中に実践的に反映さるために通訳介助者にどんな援助依頼をしたか、またはできるようになったかの変化を生徒と通訳介助者両方の聞き取り調査をおこなう。【研究成果】(1) -1授業者と通訳介助者の打ち合わせを行うことにより授業中に生徒が理解していなかった言葉や概念をその都度ピックアップできそれを後日指導し強化することができた。(1) -2生徒の理解度を知ることは聞き取り調査だけでは困難である。授業内容を応用した実践的課題(例 親子丼の調理をする、地域の消費者センターのについて調べてくる、など)を出しそのレポートから理解度を得ることが有効である。(2) 授業内容を実践した事例(家庭での食品の購入、調理、陸上大会の身支度、海外旅行時の荷物のパッキング、など)を介助者または生徒から調査できた。(3) 授業内容を応用した実践的課題をこなすために通訳介助を依頼する際に以下の変化、成長があった。1. 通訳介助者の依頼内容のコーディネートを生徒自信でメールなどを通じて行うようになってきた。2. 課題に適する通訳介助者を複数の中からを選ぶようになってきた。3. 援助依頼の内容を適切に伝えることが出来るようになってきた。