著者
宮崎 展昌
出版者
東洋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

昨年度半ばより引き続き,アメリカ合衆国・Stanford大学に滞在し,研究に従事してきた.昨年度後半より着手した博士論文の一部についての出版準備を進め,『阿闍世王経の研究-その編纂過程の解明を中心として』(山喜房佛書林,東京)として8月末に上梓することができた.同書ではその副題にあるように,主に文献学的方法論にもとづきながら『阿闍世王経』の編纂過程について論じ,筆者がこれまでに獲得しえた研究成果を広く公開することができた.今後はその成果をもとに,インド仏教思想史上における『阿闍世王経』の位置付けについて解明を進めていきたい.上記拙著の出版準備完了後は『阿闍世王経』のテキスト研究を再開した.すなわち,チベット・カンギュル諸本を用いて校合作業を進め,同経の巻(bam po)第五について校合作業を完了することができた.今後は同部分の訳注研究を進めながら,テキスト校訂を試みる.さらに,残る巻第一及び第二の部分についても校合作業および訳注研究に着手する予定である.また,他のカンギュル諸本との関連が明らかにされていない,新出のタボ寺写本やゴーンドラ写本などについて,校合・校訂作業にもとづきながら,二大系統としてしられるテンパンマ系・パンタンマ系との関係についても調査を進めている.一方,『阿闍世王経』と般若経典類との関連を探るために,『金剛般若経』『文殊般若経』『八千頌般若』について調査を進めている.今後は『二万五千類般若』などについても調査を進め,それらと『阿闍世王経』との関連について検討・考察を進めたい.