著者
宮崎 珠子 宮崎 雅雄 安田 準 岡田 啓司
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
産業動物臨床医学雑誌 (ISSN:1884684X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.54-61, 2010-11-05 (Released:2012-12-07)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

哺乳子牛は,摂取した乳汁を第四胃で凝乳し,固体成分のカードと液体成分のホエーに分けて消化を行う特有の消化機構を有する.本報では,子牛の第四胃のカード形成を,超音波画像診断法を用いて,リアルタイムに評価する手技について報告する.プローブを正中線に沿って動かして第四胃の横断像を描出し,第四胃が最大に見えた部位でプローブを体側方向に動かし,左右両方の側面から第四胃の内容物について観察することで,カードは明瞭な輪郭を持つエコージェニックな画像として,ホエーはエコーフリーな画像として描出される.カードの有無を含めた形成状態を評価する最も適した時間は,明瞭な輪郭を持つ大きな一塊のカードが観察される哺乳後1〜2時間が推奨される.超音波検査は非侵襲的であり,無麻酔での検査が可能なため,野外でも臨床応用できる利点がある.同じ凝乳する代用乳を哺乳した29頭の子牛について,第四胃のカード形成状況を調べたところ,29頭中8頭の子牛でカードが形成されず,凝乳する代用乳を哺乳してもカードを形成しない子牛が存在することを明らかにできた.以上のように,第四胃の超音波検査は,リアルタイムに哺乳子牛のカード形成を評価でき,カード形成牛と非形成牛の迅速なスクリーニングが可能になった.