著者
宮川 友博
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第22回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.87, 2006 (Released:2007-02-14)

雌の配偶戦略という面から群れの成り立ちを見ると、1、発情期が一時期に集中する雌の集団において、雄は発情期のみ必要である。(雌のみの集団)2、発情期が個体毎に違う雌の集団においては、一匹の優位な雄が常時群れに入ればよい。(一夫多妻の集団)3、2において、雌が群れの外の雄と時々浮気をすると、重層社会ができる。単雄複雌群れにおいて雌が群れの外の雄と浮気を行う社会でこそ重層社会が成立し、ヒトは進化のかなり初期からこの浮気性を持ち、重層社会を作っていたと考えられる。 また、テナガザル、オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ビーリアを順に見ると、雌の浮気性(同一繁殖期内において 複数雄を誘う性質)がチンパンジーにおいて著しく増大し、ヒトはゴリラとチンパンジーの中間に位置している。すなはち、 テナガザル、オランウータン、ゴリラ、ヒト、チンパンジー、ビーリアの順となり、進化の過程において雌の浮気性(同一繁殖期内において複数雄のを誘う性質)が順に増大してきた可能性をうかがわせる。