著者
宮川 晃尚 岡田 哲男
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.549-558, 2019

<p>超音波−重力複合場は粒子の粒径にはよらず,密度と圧縮率などの音響物性に応じて,粒子を異なる位置に浮揚させる.本論文では,粒子の表面あるいは内部で起こる反応によって粒子の音響物性に変化を誘起し,浮揚位置から高感度計測や反応評価を行った研究について述べる.たとえば,反応を介してマイクロ粒子に金ナノ粒子(AuNP)を結合することでマイクロ粒子の密度変化を誘起できる.マイクロ粒子の浮揚位置と,結合したAuNP数の間には直線関係があり,その結果,浮揚位置は反応に関与した分子数に対して直線的に変化する.マイクロ粒子とAuNPの結合にかかわる反応の適切な設計により,タンパク質,補酵素,DNA,RNAなど広範な物質の高感度計測が可能である.また,イオン交換反応はイオン交換樹脂の密度及び圧縮率を変化させる.イオン交換樹脂粒子の浮揚位置の経時変化を追跡することで,樹脂粒子内部で起こるイオン交換反応の評価が可能である.本総合論文では高感度計測法及び反応の動的評価法について,著者らの研究結果を中心に述べる.</p>