著者
岡田 哲男 原田 誠
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.27-41, 2005 (Released:2005-04-08)
参考文献数
42
被引用文献数
5 6

イオンの分離において重要な役割を果たす静電効果と溶媒の関与について著者らの研究を中心に述べた.イオン交換系及び両性イオン性の系について,クロマトグラフィー,電気泳動による結果を静電理論によるモデル計算に基づいて解析し,分離が起きる界面での様々な現象の理解を可能にした.しかし,溶媒の関与を含めた構造的側面については直接的な検討が必要であると考え,X線吸収微細構造(XAFS)を用いて,イオン交換樹脂や気液界面での単分子膜を用いたイオンの局所構造解析を行った.例えば,水中のイオン交換では,対イオンが部分的にイオン交換基から解離しているが,全体の60~70% 程度は直接イオン交換基に結合し,3分子程度の水によって水和されていることなどが分かった.また,水溶液表面での全反射XAFSを用いることにより,単分子膜でのイオン交換の評価が可能になり,膜の圧縮によるイオン交換選択性の変化が観察された.Br-は,クロマトグラフィーや電気泳動で両性イオン性分子と会合していないと考えられたが,表面XAFSでは部分的に会合していることが示唆された.
著者
宮川 晃尚 岡田 哲男
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.549-558, 2019

<p>超音波−重力複合場は粒子の粒径にはよらず,密度と圧縮率などの音響物性に応じて,粒子を異なる位置に浮揚させる.本論文では,粒子の表面あるいは内部で起こる反応によって粒子の音響物性に変化を誘起し,浮揚位置から高感度計測や反応評価を行った研究について述べる.たとえば,反応を介してマイクロ粒子に金ナノ粒子(AuNP)を結合することでマイクロ粒子の密度変化を誘起できる.マイクロ粒子の浮揚位置と,結合したAuNP数の間には直線関係があり,その結果,浮揚位置は反応に関与した分子数に対して直線的に変化する.マイクロ粒子とAuNPの結合にかかわる反応の適切な設計により,タンパク質,補酵素,DNA,RNAなど広範な物質の高感度計測が可能である.また,イオン交換反応はイオン交換樹脂の密度及び圧縮率を変化させる.イオン交換樹脂粒子の浮揚位置の経時変化を追跡することで,樹脂粒子内部で起こるイオン交換反応の評価が可能である.本総合論文では高感度計測法及び反応の動的評価法について,著者らの研究結果を中心に述べる.</p>