著者
宮戸 健二 河野 菜摘子 山田 満稔 浜谷 敏生 中村 浩幸
出版者
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

からだの内側は、粘膜上皮に覆われ、ウイルスや細菌、微小粒子状物質(PM2.5)の侵入から守られている。我々が発見したマイクロエクソソームは、卵や、生殖器と泌尿器を含む管腔構造の粘膜上皮から分泌される。マイクロエクソソームは、エクソソームと共通の成分を含むものの、構造が全く異なる逆ミセル状の構造体である。我々の研究から、マイクロエクソソームは、2つの役割(細胞膜の修復とウイルスの捕捉)を担っていることが推測される。本研究ではマイクロエクソソームを手がかりに、一見別々に見え、我々にとって身近な『子供の産まれやすさ』と『感染症への罹りにくさ』をつなぐ分子メカニズムの解明をめざす。
著者
河野 菜摘子 吉田 恵一 原田 裕一郎 大浪 尚子 竹澤 侑希 宮戸 健二
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.191-197, 2010 (Released:2010-12-03)
参考文献数
22

受精は,新しい生命の誕生には必要不可欠で,多段階の過程を経て細胞融合にいたる現象である(図1).その多段階の過程のうちの1つでも異常が認められると,受精の進行が妨げられ,次世代の個体ができなくなる“不妊”という生命のサイクルにとって致命的状況を招いてしまう.不妊は動物,植物を含めたすべての生物種の集団としての存続を脅かす難治性疾患とも考えられ,環境および内在性因子の影響から,診断法,治療法など,数々の未解明な問題を含んでいる.Izumoは精子側因子として1),CD9は卵側因子として膜融合に必須であり2–4),精子および卵子の細胞膜に存在すると考えられてきた(図2).しかし最近の研究から,CD9は卵子から放出されるナノサイズの膜構造体の主要な構成成分であることが明らかになった5).本稿では,CD9を介した配偶子融合の分子メカニズムについて紹介したい.