著者
森田 英明 大矢 幸弘
出版者
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

疫学研究から衛生的な環境になったことがアレルギー疾患数の増加に繋がっている可能性が示唆されているが、そのメカニズムは不明な点が多い。衛生的な環境を作り出す契機一つとして合成洗剤の一般家庭への普及が挙げられるが、興味深いことに、アレルギー疾患の有病率の増加はこの合成洗剤が爆発的に普及した時期と一致している。そこで本研究では、環境塵中に界面活性剤が高濃度に存在する場所の特定、アレルギー性炎症惹起につながる界面活性剤の種類の同定、コホート研究を用いた環境塵中の界面活性剤の濃度とアレルギー疾患発症の関連性の検証を通じて、環境塵中の界面活性剤のアレルギー疾患発症への関与の詳細を明らかにすることを目指す。
著者
東 範行 横井 匡
出版者
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヒトおよびマウスのiPS細胞、ES細胞から、網膜神経節細胞を作製した。網膜神経節細胞は構造的にも機能的にも成熟していた。その単離培養にも成功した。この網膜神経節細胞を、視神経を傷害したマウスに移植した、ドナー細胞は網膜内に生着するとともに、視神経入口部に向かって軸索を伸ばし、一部は視神経内に侵入した。網膜神経節細胞の軸索の複雑な経路探索について、誘導物質Sem3AやSlit1の評価を行った。各化合物をビーズに浸透させて局所で徐放したところ、軸索は化合物に応じて屈曲し経路を変更した。小型動物実験においては、網膜神経節細胞を移植し、その軸索を視神経内に誘導し経路をコントロールする可能性が示された。
著者
杉江 真以子
出版者
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ウイルス感染による上皮傷害は、喘息の発症や増悪に決定的なサイトカインIL-33を放出させる。上皮細胞内に恒常的に発現するIL-33は、細胞傷害により放出され機能すると考えられているが、その産生機構は不明な点が多い。我々の予備検討では、ウイルスdsRNA合成アナログ(polyI:C)で活性化された肺微小血管内皮細胞が、細胞傷害を介さない新規機序でIL-33 mRNA発現を誘導した。本研究ではpolyI:Cだけでなく、インフルエンザウイルスを用いて、この新規IL-33発現誘導機構を解明することで、ウイルス感染を契機とする喘息発症・重症化の予防・治療戦略の基盤となる情報提供を目的としている。
著者
原 真理子
出版者
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

PFAPA患児の扁桃における自然免疫関連遺伝子の発現に関してトランスクリプトーム解析を行った。クラスター解析から、本疾患は2つのサブタイプに分かれ、endotypeを持つことが示された。また、上流因子解析から、IFN-γ刺激、1,25-(OH)2ビタミンD減少が、自然免疫関連遺伝子を誘導する免疫経路であることが推測された。endotype間では、臨床症状も有意に異なっており、本疾患はphenotypeを持つことも示唆された。
著者
宮戸 健二 河野 菜摘子 山田 満稔 浜谷 敏生 中村 浩幸
出版者
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

からだの内側は、粘膜上皮に覆われ、ウイルスや細菌、微小粒子状物質(PM2.5)の侵入から守られている。我々が発見したマイクロエクソソームは、卵や、生殖器と泌尿器を含む管腔構造の粘膜上皮から分泌される。マイクロエクソソームは、エクソソームと共通の成分を含むものの、構造が全く異なる逆ミセル状の構造体である。我々の研究から、マイクロエクソソームは、2つの役割(細胞膜の修復とウイルスの捕捉)を担っていることが推測される。本研究ではマイクロエクソソームを手がかりに、一見別々に見え、我々にとって身近な『子供の産まれやすさ』と『感染症への罹りにくさ』をつなぐ分子メカニズムの解明をめざす。
著者
阿久津 英憲
出版者
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

受精卵は細胞核リプログラミング現象に関して2つの非常に興味深い事象を提示している。これまで受精卵の全能性で重要である遺伝子発現量補正に関わるX染色体の不活化機序に着目し卵子細胞における刷込み型X染色体不活化が卵子細胞核タンパク質の特定の化学的修飾(H3K9me3)により制御されることを見出した。これを受け、X染色体不活化を制御することで全能性獲得に寄与する転写因子を探索し、Pou5f1(Oct4)がこのエピジェネティック リプログラミングに関与することを見出した(本成果は国際誌へ投稿中)。卵子のリプログラミング分子機序から受精卵の全能性機能を解明するキー因子の働きを明らかにできた。