- 著者
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宮木 慧子
石村 真一
- 出版者
- 一般社団法人 日本デザイン学会
- 雑誌
- デザイン学研究 (ISSN:09108173)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.3, pp.55-64, 2004-09-30 (Released:2017-07-19)
- 参考文献数
- 16
日本において,昭和40年代まで陶磁器の流通包装には,ワラ包装が行われていた。本研究は,有田・伊万里をはじめ東アジアにおいて広域調査を実施し,各窯業地の諸形態を明らかにして,日本のワラ包装形態を造形の視点から比較考察する。(1)日本の包装形態は,陶磁器の形状から大型器種と小型器種に対応する2系統8種のワラ包装タイプに類型化される。大型器種に対しては衝撃に強い「太織巻き」,小型器種には円筒形の「ワラ包み」が主に行われており,産地ごとに微妙に意匠の異なるものの,同一産地においては,それぞれ特色あるワラ包装技術を共有していた。(2)各産地における包装形態と意匠の独自性は,保護機能の他に産地識別のための情報機能をも果たしていた。(3)陶磁器包装の伝播は窯業技術の伝播と深い関連が窺える。江戸前期,景徳鎮の包装技術が有田にもたらされており,高品位の磁器創出を目指していた有田の美意識と日本のワラ文化の成熟が優れた意匠のワラ包装技術を確立したと考えられる。