著者
児玉 陽子 宮本 一樹 斉藤 弘道 文 哲也 岩佐 親宏 長 綾子 志波 直人 広畑 優
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.142, 2011 (Released:2012-03-28)

【はじめに】 Paced Auditory Serial Addition Task(以下PASAT)の課題成績は高次の注意機能を反映すると言われているが、難易度が高く対象者のストレスを伴うことがあり、FosらはPASATの変法として視覚的に数字を提示することで難易度を減じたPVSATを報告している。そこで今回、PASAT-1秒・2秒(以下PASAT-1・2)を元にPower Point(Microsoft社)でPVSAT-1・2を作成・使用し、他の注意機能検査と比較検討したので報告する。なお、本研究は大学倫理委員会より承認を得て実施した。【対象】 当院脳神経外科病棟入院中の患者40名(男性16名、女性24名、平均年齢54.0±18.0歳)。【方法】 PVSAT-1・2、PASAT-1・2、及びWisconsin Card Sorting Test(以下WCST)、Trail Making Test partB(以下TMT-B)を施行し、PASAT及びPVSATの結果をWCSTの達成カテゴリー(CA6・CA5・CA4・CA3以下)別・TMT-Bの結果別(正常・要時間・不可)に分けて比較検討した。【結果及び考察】 PASATとPVSATには高い相関があり(PASAT-1とPVSAT-1:r=0.75、p<0.001、PASAT-2とPVSAT-2:r=0.77、p<0.001)、PVSATにおいて有意に値が高く、難易度が低いと考えられた。PASAT-1・2及びPVSAT-1・2各々にWCST別での比較では特にCA6群とCA3以下群の間で有意差を認めた(p<0.001)。TMT-Bの結果別では、正常群・要時間群と不可群の間で有意差(p<0.001)を認めた。TMT-B正常群13名の内、PASAT-1で92.3%(12名)、PASAT-2では76.9%(10名)が年齢平均値以下であった。また、不可群10名の内PASAT-1は30%(3名)、PASAT-2では40%(4名)、PVSAT-1・2では共に90%(9名)が施行可能であった。全体では、PASAT-1で77.5%(31名)、PASAT-2は85%(34名)、PVSAT-1・2では共に97.5%(39名)が施行可能であった。 臨床においては、PASATだけではなくTMT-BやWCSTも理解や運動機能、注意の転導性を要する場合等では施行困難なこともしばしばある。また、PASATはTMT-BやWCSTの注意機能と類似しており、PVSATがPASATとの相関を認められたことから、他の検査が施行困難な場合に注意機能の検査として適応できるのではないかと考えた。また、難易度としては他の注意機能検査と比べPVSATが低いと考えられるため、トレーニングとしての応用も検討していきたい。