著者
宮本 佑美 永野 広海 大堀 純一郎 黒野 祐一
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.154-160, 2020-09-20 (Released:2021-09-20)
参考文献数
30

ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は過去には Histiocytosis X とされ、病状に応じて Letterer-Siwe 病、Hand-Schüller-Christian 病、好酸球性肉芽腫に分けられていたが、現在はすべて LCH と表現されている。本疾患は腫瘍性疾患と炎症性疾患の両方の特徴を併せ持つ特異的な疾患である。LCH はさまざまな臓器で組織傷害を来す疾患であるため、症状は発熱、皮疹、難治性の中耳炎、難聴、骨痛など多岐にわたる。耳鼻咽喉科領域では、天蓋部を除く頭蓋顔面骨の病変は中枢神経晩期合併症を来し得る中枢神経リスク病変である。これまでの報告では側頭骨領域が多く、眼窩、篩骨洞領域は症例報告が散見されるのみで極めてまれである。今回われわれは、当初顔面外傷による眼瞼腫脹が疑われ当科受診し、眼窩から篩骨洞に原発した限局性病変の LCH の診断に至った症例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。