著者
西元 謙吾 林 多聞 早水 佳子 黒野 祐一
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.945-949, 2009 (Released:2011-06-09)
参考文献数
7
被引用文献数
2

The efficacy of the common practice in Japan of recommending gargling to prevent post-tonsillectomy infection and to reduce throat soreness remains to be scientifically and quantitatively confirmed. In an attempt to remedy this, we had 108 subjects—48 men and 60 women aged 17 to 79 years (mean: 33.8 years)—gargle with povidone-iodine (PI) or sodium guaiazulen-3-sulfonate (AZ) following bilateral tonsillectomy. We measured the clinical effects on a pain scale and pain-medication score for comparison between the two groups. Results indicated by the medication score and pain scale demonstrated that gargling with AZ significantly reduced pain compared to gargling with PI, especially right after surgery. AZ also showed an antipyretic effect, suggesting that gargling with AZ is superior to PI as a post operative gargle.
著者
宮之原 郁代 宮下 圭一 黒野 祐一
出版者
日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.821-826, 2011 (Released:2013-05-24)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

右耳閉感と発疹で発症しHIV感染、内耳梅毒が判明した1例を報告する。症例は、55才男性で、2009年7月末に右耳閉感と発疹が出現し、8月下旬、右難聴が突然出現した。前医にて右突発性難聴の診断を受け、プレドニゾロン30mgから漸減療法を受けるも改善が得られず、当院受診となった。標準純音聴力検査4分法平均聴力レベルで右43.8dB、左25.0dBと感音難聴を認めた。梅毒血清反応ならびにウエスタンブロット法にて梅毒、HIV感染が確認され、HIV感染を合併した内耳梅毒の診断となった。アモキシシリン500mg×3/日、9週投与で、聴力は改善した。HIV感染症例の感音難聴では、内耳梅毒の鑑別が必要なことが示唆された。
著者
黒野 祐一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.7-12, 2002 (Released:2003-01-28)
参考文献数
16
被引用文献数
2

鼻腔は下気道へと向かう吸気の加湿·加温作用,吸気中に含まれる様々な微生物やアレルゲンを吸着しこれを粘液線毛運動によって除去する作用など,生理的そして非特異的な生体防御機構を備えている.さらに分泌型IgAを中心とする特異的生体防御機構も備え,病原微生物を排除あるいはこれらを常在菌叢として共存させる極めてユニークな器官である.粘膜局所で産生される分泌型IgAは,溶菌作用や補体活性作用を持たず,中和作用や凝集作用のみを有し,これによって細菌が上皮表面へ定着するのを妨げる.鼻分泌液中にはこの分泌型IgAが多量に含まれ,その濃度は血清型IgAやIgG,IgMと比較してはるかに高い.慢性副鼻腔炎では,これら免疫グロブリンの産生が亢進し,鼻分泌液中の濃度が上昇する.しかし,病原菌に対する特異的抗体価は逆に低下し,慢性炎症における局所免疫機能の障害が示唆される.したがって,鼻副鼻腔炎など上気道感染症の予防には,全身免疫のみならず,粘膜局所免疫も高めることが必要かつ重要と考えられる.そこで,インフルエンザ菌外膜タンパクを用いて,マウスを経鼻,経口,経気管,さらに腹腔内全身免疫し,その免疫応答を検討した.その結果,鼻腔洗浄液中の分泌型IgAの特異的抗体活性がもっとも高値を示したのは経鼻免疫群であり,この免疫応答と相関して,経鼻免疫群ではインフルエンザ菌の鼻腔からのクリアランスがもっとも高かった.以上の結果から,鼻粘膜など上気道粘膜の防御そしてその病態に粘膜免疫応答が重要な役割を担っており,上気道感染症の予防には経鼻ワクチンが有効と考えられる.
著者
都築 建三 深澤 啓二郎 竹林 宏記 岡 秀樹 三輪 高喜 黒野 祐一 丹生 健一 松根 彰志 内田 淳 小林 正佳 太田 康 志賀 英明 小早川 達 阪上 雅史
出版者
Japan Rhinologic Society
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-7, 2009 (Released:2009-12-18)
参考文献数
9
被引用文献数
12 14

We evaluated a 20-item self-administered odor questionnaire for assessing olfactory function, proposed in 2003 by the Japan Rhinologic Society committee on olfaction tests. The 20-items selected based on results of olfactory studies in Japan were steamed rice, miso, seaweed, soy sauce, baked bread, butter, curry, garlic, orange, strawberry, green tea, coffee, chocolate, household gas, garbage, timber, stercus (shit), sweat, flower, and perfume. Subjects were 302 people —179 men and 123 women (average age: 35.7 years)— having no history of nasal or paranasal disease and tested between December 2004 and December 2007. Subjects were asked to score items as follows: “always smelled” (2 points); “sometimes smelled” (1 point); “never smelled” (0 points); or “unknown or no recent experience” (no score). Scores were calculated and represented using a percentage. Response was 99.3% (300/302), with two subjects excluded for reporting more than 10 “unexplainable” items. The mean score was 95.2% (n=300). Of the 302, 281 (93.0%) agreed on the number and 252 (83.4%) on the content of items. Scores correlated statistically significantly with those of a visual analogue scale (rs=0.501, p<0.0001, n=300). We concluded that the self-administered odor questionnaire is useful in assessing olfactory function in normal subjects. The next step will be to administer the questionnaire to diseased or otherwise compromised subjects to determine whether it is useful for clinically diagnosing such olfactory dysfunction.
著者
鈴木 賢二 黒野 祐一 池田 勝久 保富 宗城 矢野 寿一
出版者
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会会誌 (ISSN:21880077)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.193-211, 2020-11-20 (Released:2020-11-20)
参考文献数
20

三学会合同抗菌薬感受性サーベイランス委員会の事業の一つとして行われた耳鼻咽喉科領域サーベイランスの結果とともに,我々が行ってきた過去のサーベイランスの成績と合わせて第6回耳鼻咽喉科領域感染症臨床分離菌全国サーベイランス結果として報告する.参加施設は,全国12大学の耳鼻咽喉科教室とその関連施設並びに開業医院の36施設で,対象患者は2015年12月から2017年6月までに参加施設を受診した急性中耳炎(6歳以下の小児のみ)および急性増悪を含む慢性中耳炎,急性副鼻腔炎および急性増悪を含む慢性副鼻腔炎,急性扁桃炎及び扁桃周囲膿瘍(20歳以上の成人のみ)の患者で,採取した検体は,患者背景調査票と共に北里大学抗感染症薬センターに郵送し,同所にて培養同定及び検出菌の薬剤感受性の一括測定を行った.検査対象菌種は経費削減も考慮し,グラム陽性菌,グラム陰性菌各3菌種ずつ,嫌気性菌4菌種群のみとした.肺炎球菌の莢膜型別も検討した.
著者
宮之原 郁代 松根 彰志 大堀 純一郎 黒野 祐一
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.31-38, 2009 (Released:2011-08-01)
参考文献数
25
被引用文献数
2

スギ花粉症患者 29 例を対象に、プランルカストによる初期療法の有用性について初期療法群と飛散後治療群の 2 群に分類し比較検討した。初期療法群で、飛散開始期ではすべての鼻症状が、そして medication score、symptom medication score は、飛散開始期と最盛飛散期で有意に抑制された。また、quality of life (QOL) では、戸外活動、社会生活、睡眠において、シーズンを通して初期療法群のスコアが有意に低く、初期療法におけるプランルカストの有用性が示された。さらに、花粉飛散開始日までに 1 週間程度の初期療法の期間があれば、十分な効果が認められた。一方、プランルカスト初期療法が有効なグループと効果が出にくいグループがあることも示唆された。よって、プランルカストは、スギ花粉症に対する初期療法薬として、鼻症状全般に効果があり、特に夜間の鼻閉を改善させ、QOL を改善させる効果が期待できる。ただし、実際の使用に際しては、対象症例をある程度選択することが必要と思われた。
著者
鈴木 賢二 黒野 祐一 池田 勝久 渡辺 彰 花木 秀明
出版者
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会会誌 (ISSN:21880077)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.5-19, 2015-01-20 (Released:2020-10-27)
参考文献数
18

With the cooperation of the otorhinolaryngological departments at 29 universities in Japan, as well as their 26 affiliated hospitals and practitioners, we conducted the fifth national survey (The first survey conducted by The Japanese surveillance committee, consisting of the Japanese Society of Chemotherapy, Japanese Association for Infectious Disease, and Japanese Society for Clinical Microbiology) to investigate the trends of bacterial isolates and bacterial sensitivity in otorhinolaryngological major infections.The subjects comprised patients with acute purulent otitis media (185 cases), chronic otitis media (119 cases), acute sinusitis (128 cases), chronic sinusitis (92 cases), acute tonsillitis (116 cases), and peritonsillar abscess (89 cases) who presented to the medical institutions participating in the survey from January 2011 to June 2012. Using specimens obtained from the patients, bacteria were identified by culture and drug sensitivity was measured.S. pneumoniae and H. influenzae were mainly isolated from patients with acute purulent otitis media and acute sinusitis, and frequency of isolation of S. aureus was decreasing in the recent surveys. Streptococcus spp. (including S. pyogenes) was mainly isolated from patients with acute tonsillitis. Anaerobes (Peptostreptococcus spp., Prevotella spp. and Fusobacterium spp. etc.) were mainly isolated from patients with peritonsillar abscess, and frequencies of isolation of anaerobes in the recent surveys were markedly higher than observed in the former surveys.Among 112 strains of S. aureus isolated in the present survey, 28 (25.9%) were MRSA. Among 113 strains of S. pneumoniae isolated, 41 (36.8%) were PISP and 14 (12.3%) were PRSP. Among 106 strains of H. influenzae isolated, 38 (35.8%) were BLNAR, and 16 (15.1%) each were BLPAR and BLNAI, respectively. Frequency of isolation of these drug resistant bacteria was higher in patients aged 5 years or younger than in other age groups. Compared with the result of the previous surveys, frequencies of isolation of MRSA, resistant S. pneumoniae (PISP and PRSP), resistant H. influenzae (mainly BLNAR), and ABPC resistant M. catarrhalis are increasing recently.It is considered necessary to take measures to promote the appropriate use of antibiotics in order to prevent the increase of resistant bacteria.
著者
宮本 佑美 永野 広海 大堀 純一郎 黒野 祐一
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.154-160, 2020-09-20 (Released:2021-09-20)
参考文献数
30

ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は過去には Histiocytosis X とされ、病状に応じて Letterer-Siwe 病、Hand-Schüller-Christian 病、好酸球性肉芽腫に分けられていたが、現在はすべて LCH と表現されている。本疾患は腫瘍性疾患と炎症性疾患の両方の特徴を併せ持つ特異的な疾患である。LCH はさまざまな臓器で組織傷害を来す疾患であるため、症状は発熱、皮疹、難治性の中耳炎、難聴、骨痛など多岐にわたる。耳鼻咽喉科領域では、天蓋部を除く頭蓋顔面骨の病変は中枢神経晩期合併症を来し得る中枢神経リスク病変である。これまでの報告では側頭骨領域が多く、眼窩、篩骨洞領域は症例報告が散見されるのみで極めてまれである。今回われわれは、当初顔面外傷による眼瞼腫脹が疑われ当科受診し、眼窩から篩骨洞に原発した限局性病変の LCH の診断に至った症例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。
著者
積山 幸祐 黒野 祐一
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.566-571, 2014 (Released:2014-12-26)
参考文献数
21
被引用文献数
3 2

放線菌は嫌気性・非抗酸性のグラム陽性桿菌で口腔内常在菌であり,しばしば気管支,消化管,女性性器から分離される。特に齲歯,歯垢,扁桃陰窩などに無害性に存在し,組織の損傷や他の感染によって宿主の抵抗が失われてはじめて病原性を発揮する内因性感染として放線菌症を起こす。放線菌症の好発部位は,顔面・頸部40~60%,腹部20~30%,胸部10~20%であり,鼻副鼻腔は非常にまれである。今回我々は,鼻腔放線菌症の一症例を経験したので,報告する。症例は19歳の女性で頭痛,左鼻閉を訴えて当院を受診した。左下鼻道に肉芽と黒褐色塊を認め,CTでは下鼻甲介と接する石灰化陰影とその周囲に軟部組織陰影を認めた。同部位の生検による病理組織学的検査で鼻腔放線菌症と診断とされた。放線菌症に対しアモキシシリン(AMPC)1500mg/日を投与し,約2か月間保存的治療を施行したのちに局所麻酔下に摘出術を施行し,術後約1か月AMPC 1500mg/日を投与した。その後約3か月間は慢性副鼻腔炎(右前頭洞,左蝶形骨洞)に対しマクロライド少量投与を施行したが改善はなく,全身麻酔下で内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ESS)を施行した。ESS後約1年が経過したが放線菌症の再発は認めていない。治療に関してはペニシリンの大量長期投与が推奨されているが,早期に治癒せしめるために内視鏡下鼻内手術による病変の完全切除と鼻副鼻腔の好気的な環境作成が肝要と考えられた。
著者
黒野 祐一 山下 勝
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.125, no.8, pp.1298-1301, 2022-08-20 (Released:2022-09-01)
参考文献数
7

塩素消毒された水道水に殺菌作用があることはすでに知られているが, 水道水による含嗽の殺菌作用は明らかにされていない. そこで, 水道水および各種処理後の水道水の殺菌作用を観察し, それぞれの残留塩素濃度と比較した. さらに水道水含嗽後の頬粘膜上皮細胞への付着細菌数を測定した. その結果, 煮沸によって残留塩素を除去すると水道水の殺菌作用は消失し, 含嗽後あるいは唾液を添加した水道水からも残留塩素は検出されず, 水道水含嗽後の頬粘膜上皮細胞への付着細菌数も精製水と同数であった. 従って, 残留塩素を含む水道水には殺菌作用があるが, 唾液によって残留塩素の効果が失活するため, 水道水含嗽に殺菌作用はないと考えられる.
著者
黒野 祐一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.10, pp.1247-1252, 2020-10-20 (Released:2020-11-05)
参考文献数
11

粘膜免疫は消化管において病原微生物の侵入を防ぐ一方で, 生命維持に必要な食物は積極的に体内へ取り込むなど, 抗原に応じて相反する反応を示す. 上気道においても粘膜免疫が生体防御に重要な役割を果たしており, これが破綻することで感染症やアレルギー性炎症が発症する. したがって, 上気道の粘膜免疫を賦活すること, すなわち粘膜ワクチンを用いることでこれらの疾患を予防できると考えられる. 粘膜免疫において主たる役割を担っているのが分泌型 IgA で, ウイルスや細菌の上皮への接着を阻止する. 上気道に抗原特異的分泌型 IgA を誘導するには, 抗原を経鼻投与するのが最も効率的で, 現在, 経鼻ワクチンの開発が進められている. そのワクチンの一つとしてホスホリルコリンがあり, すべてのグラム陽性および陰性菌に含まれることから広域スペクトラムを有するワクチンになり得ると考えられる. また, 結合化ホスホリルコリンは粘膜アジュバントとしての作用を有しており, これらを用いた新規の経鼻粘膜ワクチンの開発を目指して現在も研究を続けている.