著者
宮本 幸一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

超弦理論に関連する宇宙モデルの観測的シグナルについて研究を行った。主な内容は以下の3点である。1:将来の観測による宇宙ひものパラメータの決定精度の推定宇宙ひもとは、宇宙論的な長さを持つ、莫大なエネルギーが凝縮した1次元的な領域である。超弦理論に基づく宇宙モデルのいくつかは、その存在を予言する。私は、将来の重力波直接検出実験、宇宙背景放射(CMB)の観測、パルサータイミング実験により、宇宙ひもを特徴付けるパラメータがどの程度の精度で決定されるかを調べた。そして、異なる実験の組み合わせによりパラメータの決定精度を改善できること、重力波直接検出実験が特に強力な手段をなることを明らかにした。2:超伝導宇宙ひもに対する観測的制限宇宙ひもの存在を予言する理論の一部においては、宇宙ひもは超伝導状態になる。このような超伝導宇宙ひもは、強力な電磁波を放出し、特異なシグナルをもたらす。私は、CMB、電波、X線、ガンマ線の観測や、ビックバン元素合成への影響を考慮して、超伝導宇宙ひもへの制限を導出し、また、将来の実験において超伝導宇宙ひもが発見される可能性を調べた。その結果、CMB非等方性の観測から最も厳しい制限が与えられること、将来の電波バーストの観測が超伝導宇宙ひもを発見する上で強力であることを明らかにした。3:初期宇宙の磁場が作るCMBエネルギースペクトルの歪みの非等方性銀河や銀河団の中の磁場の起源を説明するため、宇宙初期において磁場が作られる宇宙モデルが活発に研究されている。その中には、超弦理論に基づくモデルもある。私は、初期宇宙の磁場のシグナルとして、CMBのエネルギースペクトルの歪みに着目した。そのような歪みの空間的に一様な成分に関する先行研究を拡張し、ランダムな磁場によって作られる非一様な歪みを計算した。その結果、初期宇宙に強い磁場があれば、将来の衛星により歪みの非等方性が検出されるとわかった。