著者
沖 潤一 大見 広規 伊藤 淳一 宮本 晶恵 丸山 静男 奥野 晃正 鹿野 誠一
出版者
旭川医科大学
雑誌
旭川医科大学研究フォーラム (ISSN:13460102)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.43-45, 2001

出版社版5歳6ヵ月女児.全身が冷たく意識障害があるとして母親に連れられて受診し,入院となった.入院時には全身的に新旧入り混じった多数の外傷を認めた.低体温の他,血管内凝固症候群を呈していることが検査にて明らかとなった.体温は直腸温で31.7℃と異常な低体温を示した.母親の言動,父親の態度及び不潔な皮膚や爪,低身長,低栄養状態などからネグレクト及び被虐待児症候群と診断した.知的発達の遅延,両親の生い立ち,夫婦関係に問題がることが判明した.児童相談所,保健所に連絡をとり,患児を保護しようと試みたが両親は虐待の事実を認めず住居を変更したため強制的な保護には至らなかった.保育所,小学校,警察防犯課,家庭裁判所,地方法務局とも相談を行った.情緒不安定を理由に児童相談所に収容し,患児が帰宅したくない意思を明らかにし,虚弱児施設に入所し10年以上が経過した