著者
古森 徹哉 宮本 智文
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

沖縄県那覇近海で採集した有棘目動物オニヒトデの棘の凍結乾燥粉末について、魚毒活性を指標に溶媒分画、従来法による各種クロマトグラフィ-並びに購入設備を駆使して毒成分の精製を行い、メタノ-ルエキスより1種のステロイドオリゴ配糖体サルフェ-ト(20S-thorasterosideA)及び、2種のアルキルグリセロリン脂質(sn-1-0-hexadecylglycerol-3-phosphorylcholine,sn-1-0-octadecylglycerol-3-phosphoryl-choline)の単離同定に成功した。これら3種の化合物はいずれも強い溶血作用を有し、従来不明であったオニヒトデ棘の溶血毒はこれら3種の成分に起因することが判明した。次に、上述棘粉末の水エキスについて購入設備を駆使したゲル濾過によるクロマトグラフィ-を繰り返し、in vitroで細胞毒性を示す2種の蛋白質(Protein I 並びに Protein II)を得た。Protein Iは最終的にμBondasphereを使用したHPLCで精製した結果、分子量は約14650であり、アミノ酸分析により、Asp_<17>・Thr_<11>・Ser_8・Glu_<15>・Pro_5・Gly_<18>・Ala_9・Val_<12>・Met_2・Ile_7・Leu_6・Tyr_2・Phe_7・Lys_<14>・His_1・Arg_2の16種のアミノ酸組成を明らかにすることができた。また、N末端配列分析の結果、末端より25種のシ-クエンスが判明した。この結果をもとにGENASを用い、既知蛋白質との比較を行ったが、類似シ-クエンスを示す酢蛋白質は検索されず、新規蛋白質と考えられた。Protein Iはin vitroで選択的細胞毒性を示す結果を得ており、現在1次構造解析が進行中である。Protein IIについては、まだ、単離には至っていないが、SDS-PAGEで分子量約8万と推定され、マウスに対しては未精製ながらも強い致死作用を示すことから、Protein IIがオニヒトデ棘毒成分のマウスに対する致死毒の本体であることが推察された。