著者
安藤 貴 宮本 知子
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.47-55, 1972
被引用文献数
2

スギ苗の生長に及ぼす光の強さと密度の影響を知るために,光の強さと密度をかえて24通りに組み合わせた実験を行なった。1年生の苗を十分な陽光量の100, 76, 59, 47, 37および30%に庇陰したところに, 25, 59.2 123.5, 277.8本/m<sup>2</sup>の植栽密度で植栽した。 1生長期を経たあと,幹,根,葉の量を測定した。結果は次のとおりである。<br> 1) それぞれの光の強さにおいて,植栽密度の増加に伴い,平均個体重は減少したが,単位面積当たり現存量は増加した。また,それぞれの植栽密度において,光の強さと平均個体重または現存量の関係は量適曲線を描くのが認められた。<br> 2) 純生産量に及ぼす光の強さと植栽密度の効果は現存量と同じであった。弱度に庇陰処理された場合の純生産量の最大値は14.5t/ha・yrで,この値は,光の強さが100%の場合の最大値10.5t/ha・yrより大きい。葉の年間生産量は光の強さが100%の場合は3.1~6.Ot/ha・yrで,ギの幼~壮齢林とほぼ同じであったが,弱度に庇陰した高植栽密度の場合には7.5~9.5t/ha・yrで,幼~壮齢林のそれより大きい。<br> 3) 密度はロジスチック理論でいう逆数要因,光の強さは両性要因であることが認められたので,穂積の示した逆数式<br> 〓<br> ただし<i>w</i>: 平均個体重, &rho;: 密度, <i>L</i>: 光の強さ, <i>A</i><sub>1</sub>, <i>A</i><sub>2</sub>, <i>A</i><sub>12</sub>, <i>A</i><sub>2</sub>', <i>A</i><sub>1</sub>', <i>B</i>: 定数を適用した。計算健と実測値との誤差率は約20%程度であった。また,最適照度 (<i>L</i><sub>opt</sub>) は密度によって変わることが認められたので,<br> 〓<br> を求めたところ, &rho;&rarr;0の場合約60%, &rho;&rarr;&infin;の場合約83%という値が得られた。