著者
宮本 耕佑
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.471-477, 1965-06-01

習慣性または切迫流早産に対するVitamin Eの治療効果については, 若干の報告があり, おおくはその有効なことをみとめているが, いまだそのさいの作用機序については明確にされていない. そこでその一端をうかがう目的で, Vitamin Eが生体子宮運動にどのような影響をおよぼすかということを, ウサギについてバルーン法によって実験をおこない, つぎのごとき知見をえた. 1) 非妊成熟ウサギの子宮収縮運動は Vitamin E の投与によって抑制される. とくに投与量の増加や投与日数の延長に比例して, 抑制効果も増強する. 2) Vitamin E により抑制された子宮運動は, Estrogen (Estradiol)の併用によりまもなく回復にむかい, ついには著明な昂進をしめしてくる. すなわち Vitamin E の抑制作用は Estrogen の子宮運動昂進作用を抑制するほど強力なものではない. 3) おなじくはじめから Vitamin E と Estrogen を併用投与すると, Vitamin E の抑制効果はきわめてよわく, 投与期間の延長とともに Estrogen の効果のみが顕著にあらわれてくる. 4) Vitamin E と progesterone の併用投与では, Progesterone 単独投与あるいは Vitamin E 単独投与の場合ととくにかわった所見はなく, 波形上からのみでは両者に相剰作用があるかどうかはあきらかにしえなかった. 5) 下垂体後葉ホルモンに対しては, Vitamin E による子宮運動の抑制度にほぼ平行して感受性が低下し, progesterone の場合と類似の経過をとる. しかし Vitamin E に Estrogen を併用したときは, その投与期間に比例して, 感受性が昂進してくる. 以上のごとく Vitamin E ぱ生体子宮の運動を抑制するもので, あたかも Progesterone 様の作用があることを確認した.