著者
宮本 誠人 松下 光範 高岡 良行 堀 寛史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.1I1OS604, 2022 (Released:2022-07-11)

高齢社会における高齢者の自立した生活の支援に向けて医学的リハビリテーションの専門職である理学療法士の育成が求められている.その育成においては,理学療法熟達者の臨床経験から獲得された実践知の活用が重要である.本研究では,理学療法初学者の観察能力や論理構成力の評価支援を目的として実践知を獲得・共有する枠組みの提案とその過程における実践知の構造化・可視化を行った.提案手法では,理学療法士が患者の歩行を観察し問題点の分析を行う動作分析のテキストを対象とする.そこから実践知を表出するために,理学療法の診断における知識の最小単位をPBPU(Problem-based Physiotherapy Unit)と定義して抽出し,観察と推論の因果関係に着目して構造化した.得られた因果関係をネットワーク表現により可視化することで動作分析テキストに含まれる知識の関係を把握できるようにした.得られたネットワークを経験豊富な理学療法士に提示し定性的評価を行った結果,PBPUを用いて観察と推測の因果関係を可視化することで,動作分析における実践知の有無により生じる論理構成の差分把握に有効であることが示唆された.