著者
藤代 裕之 松下 光範 小笠原 盛浩
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.49-63, 2018

<p>東日本大震災以降,ソーシャルメディアは大規模災害時の情報伝達ツールとして重要度を増しているが,情報爆発やデマといった課題により活用が困難になっている。本研究では,課題解決を目的に,限られた時間的制約のもとで優先度の高い情報を整理する情報トリアージのソーシャルメディアへの適用可能性を検討する。調査手法は,熊本地震に関するソーシャルメディア情報を収集・分析するとともに,報道機関や消防機関に対してソーシャルメディア情報の影響についてインタビューを行った。その結果,ソーシャルメディアから救助情報を探すことは困難であること,消防機関では通常時には情報トリアージが機能しているが,大規模災害時にはソーシャルメディアの情報を含む膨大な通報が寄せられたことにより,機能不全に陥っていたことが明らかになった。ソーシャルメディア情報の整理を消防機関の活動と連携して行うことで,情報トリアージが機能し,情報爆発やデマといった課題を解決出来る可能性があることが明らかになった。本研究は,大規模災害時の情報伝達ツールとしてソーシャルメディアを活用するためには,ソーシャルメディア情報のみを対象に研究するだけではなく,被災地での活動を調査し,連携する方法を検討することが重要であることを示している。この知見は,救助活動のみならずソーシャルメディアを通した被害状況の伝達や物資支援などにも応用が可能であろう。</p>
著者
白水 菜々重 松下 光範
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.2276-2287, 2013-09-15

本研究の目的は,イベントにおいてTwitterやUSTREAMといった即時性の高いソーシャルメディアを利用することが,そのイベントのコミュニティの形成・維持にもたらす影響について明らかにすることである.近年,共通の関心や興味に基づいて人々が自発的に開催する勉強会やカンファレンスなどで,TwitterやUSTREAMといったリアルタイム性の高いWebサービスを利用してオンラインコミュニケーションを行うケースが増加している.本稿では,このようなイベント開催時にTwitterを介して行われる参加者同士のインタラクションの調査,ならびにそれを補完するアンケート調査を行い,このようなソーシャルメディアを利用したイベントを取り巻くコミュニティの特徴について分析を行った.その結果,(1)従来のオフラインだけのコミュニティには見られない立場を超えたインタラクションが観察され柔軟なコミュニティが形成されていること,(2)会場だけでなく遠隔地から上記のサービスを利用して参加するユーザの中にも情報伝播のhubになる人物が存在すること,(3)参加者の流動性がイベントの継続において重要であること,という知見が得られた.
著者
前田 安里紗 上間 大生 白水 菜々重 松下 光範
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.204-215, 2015-01-06 (Released:2015-01-06)
参考文献数
18
被引用文献数
2

The objective of this study is to support learning of Japanese onomatopoeia for foreigners who learn Japanese. In recent years, the number of such foreigners is increasing. There are a lot of onomatopoeia words in Japanese and many of them are difficult to translate because only the number of onomatopoeia words in foreign languages (e.g., Mandarin, Cantonese) are fewer than these in Japanese. To overcome the cultural difference, this paper proposes a digital picture book system for learning Japanese onomatopoeia. The system presents 32 onomatopoeia words to a user. The design criteria of the system is that: (1) adopts an interface of user participation, (2) presents a tiny story in which onomatopoeic words are associated with pictures, and (3) enables comparison of two synonymous/antomynic onomatopoeias. We conducted a user study with foreign learners and revealed that the proposed system improves understanding of semasiological differences between two confusing onomatopoeic words.
著者
藤代 裕之 松下 光範 小笠原 盛浩
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.49-63, 2018 (Released:2018-05-19)
参考文献数
10

東日本大震災以降,ソーシャルメディアは大規模災害時の情報伝達ツールとして重要度を増しているが,情報爆発やデマといった課題により活用が困難になっている。本研究では,課題解決を目的に,限られた時間的制約のもとで優先度の高い情報を整理する情報トリアージのソーシャルメディアへの適用可能性を検討する。調査手法は,熊本地震に関するソーシャルメディア情報を収集・分析するとともに,報道機関や消防機関に対してソーシャルメディア情報の影響についてインタビューを行った。その結果,ソーシャルメディアから救助情報を探すことは困難であること,消防機関では通常時には情報トリアージが機能しているが,大規模災害時にはソーシャルメディアの情報を含む膨大な通報が寄せられたことにより,機能不全に陥っていたことが明らかになった。ソーシャルメディア情報の整理を消防機関の活動と連携して行うことで,情報トリアージが機能し,情報爆発やデマといった課題を解決出来る可能性があることが明らかになった。本研究は,大規模災害時の情報伝達ツールとしてソーシャルメディアを活用するためには,ソーシャルメディア情報のみを対象に研究するだけではなく,被災地での活動を調査し,連携する方法を検討することが重要であることを示している。この知見は,救助活動のみならずソーシャルメディアを通した被害状況の伝達や物資支援などにも応用が可能であろう。
著者
永井 廉人 大杉 隆文 松下 光範
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.2O3OS24b01, 2018 (Released:2018-07-30)

ユーザ投稿型料理レシピサイトの料理レシピは日々増加しており,膨大な量が存在する.その中から,ユーザが所持する調理器具や食材といった自身の調理環境に適した料理レシピを提示することは容易ではない.本研究ではこの問題を解決するため,調理環境を考慮した料理レシピの提示を目指す.本稿ではその端緒として,料理レシピ文中の食材と調理動作を手掛かりに,省略されている調理器具の候補を推測する手法を提案する.この手法を用いた結果,料理レシピ文中で省略されている調理器具の候補を推測することができ,提案手法の有効性を確認した.
著者
加藤恒昭 松下 光範 平尾 努
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.108, pp.89-94, 2004-11-05
被引用文献数
13

動向情報は,製品価格や内閣支持率の変化など,時系列情報に基づき,それを総合的にまとめ上げることで得られるものである.このような動向情報の効率的な提供には,文章だけでなくグラフなどの視覚的手段を利用し,それらを協調させることが必要となる.本稿では,複数文書に分散した様々な動向情報を文章や図表で要約・可視化するという研究課題を提案し,その処理の枠組みを示す.加えて,この課題の研究に有益であろうコーパスについて説明し,これを共通の研究素材とし,動向情報の要約と可視化への関心を共有する研究者によるワークショップを提案する.Trend information is obtained by synthesis and organization of series of temporal information such as transitions of a product price and a degree of public support for a cabinet. Effective communication of trend information should employ as its media not only text but also visual ones such as charts, and use those in a cooperative manner. In this paper, a research theme is proposed, that allows trend information scattered in multiple articles to be gathered, summarized, and provided in linguistically and/or visually. We show a framework to accomplish this research and explain a corpus useful for that purpose. We also propose a workshop on this research on summarization and visualization of trend information in which the researchers share this corpus as a common material.
著者
松下 光範 今岡 夏海
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

近年、ディジタル端末の発展・普及により電子化されたコミックを読む人が増加している。従来の紙媒体のコミックと異なり、ディジタル媒体では動的な表現が可能である。しかし電子書籍のこのような特徴を生かした表現方法や生成方法については十分な検討が進んでいない。そこで本研究では、ディジタルコミックのための新たな表現方法の確立を目指し、コミックのオノマトペにユーザが動きを付与できるツールを提案する。
著者
朴 炳宣 松下 光範
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

本研究の目的は,内容情報に基づいたコミックのアクセスの実現である.これまで,コミックの内容情報を抽出する試みとして,コミックのレビューから記述的特徴に基づき特徴語群の抽出を行ってきた.しかし,抽出された特徴語群中の固有表現は,ユーザの知識によって得られる情報量が大きく異なる.本稿では,レビュー文から抽出された特徴語群に含まれる固有表現がコミックの特徴理解に及ぼす影響について調査した.
著者
山西 良典 杉原 健一郎 井上 林太郎 松下 光範
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.155-162, 2015 (Released:2015-02-20)
参考文献数
16
被引用文献数
2

Comic has, recently, been known as one of the most beloved entertainment and affective medium in the world. This paper describes about extraction of Kansei highlight from comic using social data. There seems to be Kansei highlight that most people approve in comic, because several related books where impressive scenes and captions for a comic are gathered are published. Through the experiments on impressions, we obtained social data for comics. We used the social data to extract Kansei highlight from comic. Through the three types of experiments, we confirmed that social data was available for extracting Kansei highlight from comic. Moreover, we designed the interface of social reading system for comic considering interaction on existing social service. We believe that the extraction of Kansei highlight from comic using social data increases attraction of digital comic.
著者
赤井 友紀 山下 諒 松下 光範
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.79-82, 2015-09-18

本研究の目的は,漫画特有の表現である漫符を利用してストーリを動的に変化させるディジタル絵本システムの実現である.漫符には多様な種類があり,キャラクタに豊かな感情表現を与えることができる.また,同じ種類の漫符であっても付与する位置や数によって表現の意図を変化させることができる.提案システムでは,こうした漫符の特徴を利用し,ユーザがキャラクタに付与した漫符に応じて異なるストーリを提示することができる.
著者
陳 焔 白水 菜々重 松下 光範
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

本研究の目的はコミックの文化的価値を他国の人々により深く理解してもらうための言語障壁の低減である。コミック中のオノマトペは読者に臨場感を伝える重要な役割を果たしているが、翻訳版では訳されない場合が多い。本稿では、中国人を対象に日本のオノマトペがどう理解されているかについて調査した。オノマトペの理解がコミックをより楽しむ上で重要であるものの、単に訳すことは必ずしも最適解ではない事が確認された。
著者
白水 菜々重 松下 光範
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.2276-2287, 2013-09-15

本研究の目的は,イベントにおいてTwitterやUSTREAMといった即時性の高いソーシャルメディアを利用することが,そのイベントのコミュニティの形成・維持にもたらす影響について明らかにすることである.近年,共通の関心や興味に基づいて人々が自発的に開催する勉強会やカンファレンスなどで,TwitterやUSTREAMといったリアルタイム性の高いWebサービスを利用してオンラインコミュニケーションを行うケースが増加している.本稿では,このようなイベント開催時にTwitterを介して行われる参加者同士のインタラクションの調査,ならびにそれを補完するアンケート調査を行い,このようなソーシャルメディアを利用したイベントを取り巻くコミュニティの特徴について分析を行った.その結果,(1)従来のオフラインだけのコミュニティには見られない立場を超えたインタラクションが観察され柔軟なコミュニティが形成されていること,(2)会場だけでなく遠隔地から上記のサービスを利用して参加するユーザの中にも情報伝播のhubになる人物が存在すること,(3)参加者の流動性がイベントの継続において重要であること,という知見が得られた.This paper investigates how web services for real-time communication influence formulation of a community. Since live streaming services with simple equipments become available, more and more events including conferences and workshops are broadcasting recently. Microblog services along with the live streaming also activate online communication among members of the event. We assume that such the web services play an important role to maintain sustainable growth of the community. To observe interaction among members of the community during their holding event, we collected tweets which relate to the event and analyzed them. Our findings so far are as follows; (1) acquiring certain amount of new participants constantly is important, (2) beginning organizers tend to have an experience of attending previous event of the community via live streaming and/or on site, and (3) several key participants to propagate the event's activities exist both on site and off site.
著者
宮本 誠人 松下 光範 高岡 良行 堀 寛史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.1I1OS604, 2022 (Released:2022-07-11)

高齢社会における高齢者の自立した生活の支援に向けて医学的リハビリテーションの専門職である理学療法士の育成が求められている.その育成においては,理学療法熟達者の臨床経験から獲得された実践知の活用が重要である.本研究では,理学療法初学者の観察能力や論理構成力の評価支援を目的として実践知を獲得・共有する枠組みの提案とその過程における実践知の構造化・可視化を行った.提案手法では,理学療法士が患者の歩行を観察し問題点の分析を行う動作分析のテキストを対象とする.そこから実践知を表出するために,理学療法の診断における知識の最小単位をPBPU(Problem-based Physiotherapy Unit)と定義して抽出し,観察と推論の因果関係に着目して構造化した.得られた因果関係をネットワーク表現により可視化することで動作分析テキストに含まれる知識の関係を把握できるようにした.得られたネットワークを経験豊富な理学療法士に提示し定性的評価を行った結果,PBPUを用いて観察と推測の因果関係を可視化することで,動作分析における実践知の有無により生じる論理構成の差分把握に有効であることが示唆された.
著者
赤星 俊平 白水 菜々重 松下 光範
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.1017-1018, 2017-03-16

本稿では,2016年7月に日本でサービスが開始されたPokemon GO を題材に,それが学生の勉学に支障をきたしたかについて検証する.注目されるゲームがリリースされる際には,定量的な根拠を伴わないにも関わらず,それらの勉学に対する負の影響がしばしば取りざたされ,その言説が一定の説得力を持って人々に受け入れられている.これは,ゲームに対する偏見を助長する懸念があり,検証する必要があると考える.そこで本稿では,Pokemon GO のリリース直後に行われた大学の期末試験を対象とし,受験者のPokemon GO のトレーナーレベルと試験の成績の相関を分析することで,Pokemon GO のプレイ時間が試験の成績にどのように影響したかについて定量的に検証する.
著者
朴 柄宣 居林 香奈枝 松下 光範
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

本研究では,キャラクタの性格に基づいたコミック検索支援システムの実現の端緒として,エゴグラムを用いたキャラクタ性格分類を試みる.現状のコミック検索システムでは,コミックの内容情報に基づいた検索が困難である.そこで,Web 上のリソースから抽出したデータを用いて,エゴグラムに基づくキャラクタの性格分析手法をについて提案する.提案手法では,性格を表す語にエゴグラムの自我状態を基底とするベクトルを付与し,そのベクトルの値によって,キャラクタの性格を分類する.実験により,本手法のキャラクタ分類精度は 55.0% を示した.
著者
大杉 隆文 仲西 渉 多井中 美咲 井上 卓也 伊藤 悠 岩井 瞭太 香川 健太 松下 光範 堀 雅洋 荻野 正樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.1765-1775, 2017-11-15

本研究の目的は,動物園の来訪者を対象に,園内を回遊しつつ自発的に動物に対する知識を深めることを促すことである.動物園などの社会教育施設では,来訪者に対して学習機会を提供することが可能である.しかし,動物園においては,学習の機会を提供する役割が薄れ,娯楽施設のような認識がされており,来園者の能動的な学習の姿勢を促すような情報の提示方法についての工夫は不十分である.本稿では,展示物に対する説明提示の方法を改善するために,利用者が自発的に動物を観察し,動物に対する知識を得ながら園内を回遊できるアプリケーションを実装した.回遊アプリには,(1)クイズ機能,(2)キャッチフレーズ提示機能,(3) Map機能,(4)動物図鑑機能を取り入れた.ユーザ観察の結果,アプリケーションがより詳しく観察することに貢献していること,動物園の全体に行動が及んでいることが示唆された.The purpose of this research is to encourage a visitor of zoo to deepen their knowledge of animals by facilitating autonomic obserbation while walking around the zoo. In general, the primary role of social educational facilities such as zoo is to offer learning opportunities to visitors. However, particularly at zoo, the role is diminished and it tends to be recognized as entertainment facilities. We assume that ingenuity on presenting information of animals to encourage visitors' active learning is insufficient. In order to improve the problem, this paper proposes a mobile application that users can spontaneously observe animals and get knowledge of the animals while going around in the zoo. The application has fourfunctions: (1) providing a quiz, (2) providing catch phrases, (3) navigating in the zoo, and (4) surveying animals' biology. Experimental results suggested that the application facilitates more detailed observation, and that the participant's behavior is spreading throughout the zoo.
著者
宮崎 和也 松下 光範
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.27, pp.155, 2011

本研究では,文章の編纂における入力方法の違いに着目して,文章を纏める過程のモデル化を行う.コンピュータの普及に伴い,文章の産出をキーボード入力で行う人が多くなった一方で,手書きで文章を産出する人もまだ多くいる.その理由は,これらの入力方法の利点が異なるためである.そこで,このような利点の違いを活かした新たな複合的入力手段の実現に向けた基礎検討を行う.その第一歩として,入力方法の違いが文章を纏める過程で,執筆者の行為にどのような差異をもたらすのかを実験を通して検証した.その結果,文章を纏める過程を順序と行為の頻度に着目すると,執筆者の文章を纏める過程が4つのパタンへと分類できることがわかった.