- 著者
-
宮林 隆吉
- 出版者
- 日本マーケティング学会
- 雑誌
- マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.1, pp.12-22, 2020-03-04 (Released:2020-03-04)
- 参考文献数
- 18
グローバル経営において国や文化の異なる従業員同士の融和は重要な課題であり,国境や文化を超えて組織アイデンティティを構築するためにも,人々を束ねる経営理念が重要な役割を果たすと考えられる。しかし,多くの日本企業の人材面・制度面での現地化は遅れており,安易に翻訳された理念やビジョンがそのまま輸出されて形骸化しているケースが見られる。本研究では,まず経営理念が組織アイデンティティの重要な基盤であり,戦略や組織のあり方に大きな影響を与える要素であることを先行研究より考察した。次に,異なる文化圏(アメリカ,中国,日本,ドイツ)の企業計121社の経営理念をコンテンツ分析・比較し,国民文化が経営理念に与える文化の影響度を検証した。その結果,権力格差(PDI)と不確実性の回避(UAI)が社内外のステークホルダーとの関係構築姿勢に影響を与えていることが認められた。今後,経営理念を核とした企業ブランディングや組織運営を行う上でも,グローバル企業にとって異文化文脈の理解は欠かせない。