著者
宮河 昭夫
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.15, no.14, 1963-12

従来行われて来た生物学的妊娠反応は多数の実験動物を必要とし, 且つ長時間を要し, その煩雑性は日常誰もが痛感して来た所である. HCGを免疫反応によって定性, 定量せんとする試みは1931年以降, 多数の研究者によって検討されて来たが, Bioassayに代る程の良好な成績はえられなかった. 近年, Wideら, Robbinsらは方法論的に更に進んだ免疫反応によって単時間に, 特異的に尿中HCGのImmunoassayが可能であると報告した. そこで私は従来漠然としていたAntihormoneの性状をしらべると共に, Immunoassayの特異性及び感度を検討し, 臨床応用を行った. Antihormoneの性状を検討するためにOuchterlonyのGel拡散法によって抗原, 抗体分析を行った. 免疫学的妊娠反応はRobbinsらのLatexagllutination Inhibition Reactionによって行った. 成績は次の如くである. 1)抗原として使用したCommercial HCGは抗原分析の結果, 血清, 尿蛋白成分のContaminationがあり, 家兎抗血清にはそれらと反応する非特異性抗体の産生が起こることを明らかとした. 2)家兎抗血清を血清, 尿蛋白成分によって吸収を行うとHCGを含む試料に対して特異的であり, Antihormoneの確認が可能であった. 3)免疫学的妊娠反応は吸収抗血清を使用することによって特異性反応を示し, 感度8~10iu/ccでもって臨床応用出来た. 4)即ち正常妊婦223例では妊娠初期98.9%, 中期94.8%, 後期85.1%の陽性率であり, 後期に於てやゝ成績の低下をみたが, 全体として93.3%の陽性率であった. 5)外妊の疑, 胞状奇胎, 絨毛上皮腫患者では100%の定性率であった. 6)筋腫, 頚癌患者などの非妊婦人に於ては99.1%の陰性率であった. 7)Friedman反応と平行して行った35例は全例共一致した. 8)以上363例に行った免疫学的妊娠反応の定性率は95.6%であった. 9)正常妊婦の尿中HCGの定量を行い, 妊娠初期に一峰性のある定量曲線かえられ, 妊娠初期115555iu/1, 中期35333iu/1, 後期26666iu/1の定量値をえた. 胞状奇胎, 絨毛上皮腫患者に於ても治療処置後のHormone定量が可能であった. Antihormoneの性状をしらべることによって特異性のある抗血清がえられ, Robbinsらの方法を検討し, 臨床試料に於て95.6%の定性率があり, 定量への応用の可能であることを明らかにした. 本法の臨床的意義は極めて大であると考えられる.