著者
宮田 咲矢香 小椋 純一 大住 克博
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.205-213, 2022-08-01 (Released:2022-10-25)
参考文献数
46
被引用文献数
2

里山の植生の形成過程を理解する目的で,近世には無立木地が卓越していたと考えられている里山が森林化した時期を,文献資料や旧版地形図の植生や土地利用に関する記号より推定した。対象とした京阪奈丘陵北部では,明治中期には荒地や草地,土壌浸食地などの無立木地が卓越していが,明治後期に一斉に森林化していったと推定された。成立した森林は,アカマツが優占する針葉樹林であったと考えられた。明治後期の森林化は,明治前期に砂防を主な目的とした山林保護,緑化促進などの施策が行政によりとられたこと,農業用の刈敷や秣などの利用が減少し,農村周辺の丘陵地での採草が衰退したことにより,人為攪乱が減少して引き起こされたものと考えられた。