著者
宮脇 裕 村井 昭彦 大谷 武史 森岡 周
出版者
一般社団法人 日本基礎理学療法学会
雑誌
基礎理学療法学 (ISSN:24366382)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.50-55, 2022 (Released:2022-10-17)
参考文献数
25

運動主体感(Sense of agency)とは,自分が自分の運動を制御しているという感覚を指す。この感覚は,運動の感覚フィードバックに対しフィードバック制御を駆動する役割をもち,感覚入力と運動出力を紐付けるMediator の役割を担っていると考えられている。運動主体感の誘起には,運動に伴う内的予測などを含む感覚運動手がかりと,運動に直接関連しない知識や信念などの認知的手がかりが関与する。手がかり統合理論によると,状況に応じたこれら手がかりの信頼性に基づき,運動主体感への貢献度を決める重み付けが変化する。この理論に基づき,我々は運動制御時に感覚運動手がかりと認知的手がかりがどのように利用され運動主体感が導かれるのか,その重み付け変化(i.e., 手がかり統合戦略)の実態について検証を進めてきた。これらの研究成果を中心に,本稿では,運動主体感について運動制御との関係性を概観し,手がかり統合理論の観点からそのメカニズムを議論する。
著者
宮脇 裕 山本 大誠
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.177-183, 2018-01-31 (Released:2018-02-23)
参考文献数
27

他者運動の観察による運動の共鳴は,自身の運動経験から影響を受けるが,非生物学的な動きの観察における運動経験の影響は明らかではない。そこで非生物学的な動きを観察対象とし,運動経験が運動共鳴に及ぼす影響を検証した。対象者は,非生物学的な動きである視覚刺激(三角形)の周期的な垂直運動を観察しながら,腕の周期的な水平運動を実施した。水平運動が垂直方向にどの程度ばらついたかを運動共鳴の指標とした。測定間に,対象者は運動経験として垂直運動を実施した。結果は,対象者の運動は何も観察せずに水平運動を実施したときと比べて,三角形の垂直運動の観察により有意に垂直方向にばらついた。運動経験の前後では,共鳴の程度に有意差を認めなかった。運動制御は非生物から影響を受けている可能性が示唆された。運動経験は,観察対象との運動方向の一致のみでは,その後の運動共鳴に影響を及ぼさないことが示唆された。