- 著者
-
中西 智也
- 出版者
- 一般社団法人 日本基礎理学療法学会
- 雑誌
- 基礎理学療法学 (ISSN:24366382)
- 巻号頁・発行日
- pp.JJPTF_2023-S05, (Released:2023-09-16)
- 参考文献数
- 28
パラリンピック・アスリートは,喪失した心身機能を代償し,高いパフォーマンスを発揮するために,神経システムの可塑性を最大限に発揮していると考えられる。本稿では,脊髄損傷アスリートと下肢義足アスリートの脳構造・機能に関する研究結果を概観し,適応の背景にある神経機序について議論する。脊髄損傷アスリートでは,一次運動野の上肢支配領域が拡張し,また,一次運動野と上頭頂小葉間の機能的結合性が増強し,高い上肢運動機能を発揮する神経基盤となっている可能性が示された。また,下肢義足アスリートでは,断端部収縮時に同側一次運動野の脳活動が増強し,前部帯状回や背外側前頭前野といった意欲-運動ネットワークとの相関が見られた。これらの結果は,パラアスリートの脳再組織化には,障害由来性代償的変化と使用頻度依存性可塑的変化の両方の要因が関与しており,その相互作用が特異的な脳再組織化を誘発していると考えられる。