著者
小澤 実奈 村田 伸 窓場 勝之 小西 佑磨 阪本 昌志 高橋 萌 吉田 安香音 安彦 鉄平 白岩 加代子 阿波 邦彦 堀江 淳 甲斐 義浩
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.179-183, 2016-01-31 (Released:2016-03-17)
参考文献数
18
被引用文献数
4 7

要旨:本研究の目的は,最適歩行と最速歩行の歩行パラメーターと下肢筋活動を比較し,それぞれの特徴を明らかにすることである。方法は,健常成人女性15名を対象に,歩行中の大腿直筋,大腿二頭筋長頭,前脛骨筋,腓腹筋内側頭の筋活動量を,表面筋電計を用いて測定した。なお,歩行パラメーターは歩行分析装置を用いて評価した。その結果,歩行パラメーター,筋活動においてすべて有意差を示した。さらに,最適歩行に比べ最速歩行の歩行率は歩幅よりも有意に増加し,立脚時間・両脚支持時間は有意に減少した。下肢の筋活動においては,最速歩行ですべての筋活動が2倍前後増加し,遊脚期の大腿直筋のみ約3倍増加した。以上のことから,歩行速度の増大には,歩行率の増加,立脚期の短縮が大きく関与し,また筋活動では前方への推進力としての役割が強い大腿直筋が大きく影響していることが示唆された。
著者
松本 典久 村田 伸 山田 道廣
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.161-165, 2020-01-31 (Released:2020-02-07)
参考文献数
12

本研究は,股関節開排運動における股関節周囲筋の筋活動を解析した。対象は健常成人男性15名であり,被検筋は大腿筋膜張筋,大殿筋,中殿筋,縫工筋の4筋とした。股関節開排運動時の積分筋電図を各筋最大筋力発揮時の積分筋電図で正規化して,開排運動時における筋活動の指標とした。最大努力下での股関節開排運動時において,被検筋全てに各筋最大筋力発揮時の約半分から同程度の筋活動が認められた。股関節開排筋力と筋活動との関係を解析したところ,被検筋全てにおいて,股関節開排筋力の増加に伴い筋活動も増加していた。これらの結果から,股関節開排筋力には大腿筋膜張筋,大殿筋,中殿筋,縫工筋が関与しており、股関節開排筋力が股関節周囲筋の総和的筋力を表す指標となることが示唆された。
著者
古後 晴基 村田 潤 東 登志夫
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.189-193, 2015-01-30 (Released:2015-03-04)
参考文献数
17
被引用文献数
3 4

[目的]本研究は,身体柔軟性と関節弛緩性において性差および関係性について検証した。[対象と方法]大学2年生の健常人42名(男性28名,女性14名)を対象とした。身体柔軟性および関節弛緩性スコアを評価した。身体柔軟性の評価は,指足尖間距離,指床間距離,膝床間距離,および中指-中指間距離の測定とした。[結果]身体柔軟性および関節弛緩性スコアの測定値を性別間で比較したところ,関節弛緩性スコアにおいて性差を認めた。身体柔軟性の測定値と関節弛緩性スコアとの関連を分析したところ,関節弛緩性スコアと有意な相関を示した身体柔軟性の測定項目はなかった。身体柔軟性の各測定項目間において,指足尖間距離と指床間距離に極めて強い相関関係が示され,指床間距離と膝床間距離に弱い相関関係が示された。[結語]女性は男性に比べ関節弛緩性が高いことが示唆された。本研究における身体柔軟性評価の指標と関節弛緩性評価の指標は関連がないことが示唆された。
著者
中島 彩 村田 伸 飯田 康平 井内 敏揮 鈴木 景太 中嶋 大喜 中村 葵 白岩 加代子 安彦 鉄平 阿波 邦彦 窓場 勝之 堀江 淳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.133-137, 2016-09-30 (Released:2016-10-22)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究は健常成人女性14名を対象に,ヒールの高さの違いが歩行パラメータと下肢筋活動に及ぼす影響について検討した。ヒールなしおよびヒール高3cm と7cm 靴を着用した歩行中の歩行パラメータと下肢筋活動を計測した結果,歩行速度および歩幅とストライド長はヒールなし歩行に比べて,ヒール高7cm 歩行で有意に低下した。ヒールなし歩行とヒール高3cm 歩行のそれらの歩行パラメータには,有意差は認められなかった。両脚支持時間は,ヒールなし歩行に比べてヒール高3cm と7cm 歩行で有意に短縮したが,遊脚時間は後者が有意に増大した。下肢筋活動においては,測定した4筋すべてにおいて有意差が認められなかった。以上のことから,ヒール高3cm 以上で歩行中の立脚時間や遊脚時間に影響を与えるが,ヒール高3cm までであれば,歩行速度および歩幅やストライド長には影響が少ないことが示唆された。
著者
大田尾 浩 八谷 瑞紀 村田 伸 溝上 昭宏 小野 武也 梅井 凡子 大塚 彰 川上 照彦
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.93-99, 2012 (Released:2013-04-02)
参考文献数
38
被引用文献数
3

[目的]脳卒中片麻痺患者の歩行の可否に影響を及ぼす要因とカットオフ値を検討した。[対象]対象に認知機能が低下した患者を含む脳卒中片麻痺患者35名(男性22名,女性13名)とした。[方法]候補となる要因を年齢,Brunnstrom stage,立位バランス,上肢筋力,腹筋力,下肢筋力,足底感覚,および認知機能とし,これらの要因と歩行能力を評価した。歩行能力に影響する要因をロジステック回帰により分析し,ROC 曲線から歩行自立を判別するカットオフ値を検討した。[結果]歩行の可否に影響を及ぼす要因は,麻痺側下肢筋力とHDS-R 得点が選択された。歩行自立を判別するそれぞれのカットオフ値は,麻痺側下肢筋力では体重比24%,HDS-R 得点では25点であった。[結語]脳卒中片麻痺患者の麻痺側下肢筋力とHDS-R 得点によって,歩行自立を判別できる可能性が示唆された。
著者
白岩 加代子 村田 伸 安彦 鉄平 堀江 淳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.121-126, 2017-10-06 (Released:2017-10-05)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

本研究は,地域在住の女性高齢者を対象に運動頻度と実施時間について検証した。日常生活における運動頻度と実施時間を基に,「運動なし」,「毎日30分未満」,「ときどき30分以上」,「毎日30分以上」の群に分け,身体機能と身体組成に差異がみられるか比較した。その結果,身体機能に関しては,毎日30分以上の運動を行っている高齢者では,他の群より,下肢筋力,バランス能力の評価が有意に良好な値を示した。また,毎日運動は実施していても実施時間が30分未満の場合には,日頃運動を行っていない高齢者と身体機能に有意差は認められなかった。運動を行っていない高齢者では,体脂肪率とBody Mass Index が運動を行っている高齢者よりも有意に高値を示した。これらのことから,高齢者の身体機能の維持・向上のためには,毎日30分以上の運動を取り入れた生活を送ることが望ましいと考える。
著者
福田 謙吾 石部 貴之 吉岡 聖真 谷川 孝 峯松 準 柏原 享平 金井 秀作
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.81-85, 2022-10-26 (Released:2022-10-28)
参考文献数
19

【目的】本研究の目的は短期集中型通所サービスにおいて,運動介入による特定高齢者の運動機能向上に必要な期間を検討することである。 【対象と方法】当法人の短期集中型通所サービスの運動機能向上プログラムを6ヶ月間利用した特定高齢者37名を対象とし,握力,開眼片脚立位保持時間,5 m歩行時間,Timed up & go test について利用開始時,介入3 ヶ月,介入6ヶ月の結果を後方視的に分析した。 【結果】握力,開眼片脚立位保持時間は介入効果の有効性が確認できなかった。5 m 歩行時間,Timed up & go test は利用開始時,介入3 ヶ月,介入6ヶ月と有意に速くなった。 しかしながら,介入3 ヶ月と介入6ヶ月には統計学的な有意差は確認できなかった。 【結論】本研究の結果から,短期集中型通所サービスの運動介入は3 ヶ月以内に5 m歩行時間とTimed up &go test を指標とした運動機能を向上させる可能性を示唆した。
著者
中村 葵 村田 伸 飯田 康平 井内 敏揮 鈴木 景太 中島 彩 中嶋 大喜 白岩 加代子 安彦 鉄平 阿波 邦彦 窓場 勝之 堀江 淳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.35-39, 2016-04-30 (Released:2016-07-29)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

本研究の目的は,歩行中のスマートフォンの操作が歩行に及ぼす影響を明らかにすることである。対象は,健常成人28名(男性16名,女性12名)とした。方法は,通常歩行と歩きスマホの2条件下にて,屋内で約20m の歩行路を歩いてもらい,そのうちの2.4mを測定区間とした。なお,測定機器には,歩行分析装置ウォークWay を用い,歩行パラメータ(歩行速度,歩幅,重複歩長,立脚時間,両脚支持時間,歩隔,足角)を比較した。その結果,歩きスマホは通常歩行に比べて,歩行速度,歩幅,重複歩長が有意に減少,立脚時間と両脚支持時間は有意に増加,歩隔は増加傾向を示した。以上のことから,歩きスマホでは,歩幅や重複歩長が短縮し,立脚時間や両脚支持時間は延長することで,歩行速度が低下することが明らかとなった。
著者
岩瀬 弘明 村田 伸 日沖 義治 北尾 沙友里 中村 純子 中井 良哉 村上 貴士 窓場 勝之
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.87-91, 2014-07-01 (Released:2014-09-12)
参考文献数
24

【目的】iPad アプリケーション「Touch the Numbers」の信頼性と妥当性について検討した。【方法】健常成人34名を対象とした。信頼性の検討には級内相関係数ICC(1,1)と最小可検変化量(MDC)を用いた。また,妥当性の検討はTMT-A との関連から求めたピアソンの積率相関係数から検討した。【結果】ICC=0.66(95%CI:0.42‐0.81),MDC95は6.3秒であった。また,Touch the Numbers とTMT‐A との間に有意な相関(r =0.57,p<0.01)が認められた。【結論】これらの知見から,Touch the Numbers の再現性と妥当性が確認され,注意機能検査として使用できる可能性が示された。
著者
野田 優希 古川 裕之 松本 晋太朗 小松 稔 内田 智也 石田 美弥 佃 美智留 藤田 健司
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.197-200, 2017
被引用文献数
1

<p>バレーボールの傷害調査を行い,男女間の傷害発生の傾向を分析した。対象は469名1046件(男性142名332件,女性327名714件)であった。部位別傷害発生率は男女ともに膝関節と足関節が上位を占めた。疾患別傷害発生率は足部,腰部,肩関節,下腿において男女間で有意な差がみられた(P<0.01)。足部では,女性において中足骨疲労骨折の発生率が高かった。腰部では,男女共に筋筋膜性腰痛が多くを占めた。また男性において椎間板性腰痛症の発生率が高かったことが特徴的であった。肩関節では,男性で肩関節インピンジメント症候群,女性では動揺肩が多かった。下腿では,女性においてシンスプリントの発生率が高かった。バレーボールでは足部,腰部,肩関節,下腿において発生する傷害が男女で異なっており,コンディショニング指導の際は性差による傷害発生の特徴を考慮する必要性が示された。</p>
著者
安田 直史 村田 伸
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.109-115, 2012 (Released:2013-04-02)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

本研究は,通所リハビリテーション施設に通所している要介護高齢者を介護する主介護者に対する支援についての指針を得ることをねらいとし,抑うつに影響を及ぼす因子を抽出することを目的とした。対象は,要介護高齢者43名とその主介護者43名とした。主介護者の抑うつ度,要介護度,要介護者の年齢,介護期間,主介護者の年齢,介護負担感,主介護者の睡眠時間,要介護者のADL 能力,要介護者の抑うつ度を調査し,主介護者の抑うつ度との関連を検討した。重回帰分析により,抑うつに影響を及ぼす因子として抽出された項目は,要介護者年齢と主介護者の介護負担感の2項目であり,要介護者の年齢が高いほど,主介護者の介護負担感が高いほどに主介護者の抑うつが高いことが確認された。 今回の知見より,要介護高齢者を介護する主介護者の抑うつを軽減させる為には,加齢によって失われる機能や疼痛などに対するリハビリテーション,主介護者の介護負担感へのサポートの重要性が示された。
著者
村田 伸 甲斐 義浩 安彦 鉄平 中野 英樹 岩瀬 弘明 松尾 大 川口 道生 松本 武士 吉浦 勇次 角 典洋
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.195-198, 2018-01-31 (Released:2018-02-23)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

本研究は,開発した膝関節内反動揺を軽減させる構造の靴(膝内反軽減シューズ)を紹介するとともに,変形性膝関節症患者の歩行に及ぼす影響を検討した。変形性膝関節症患者21名(すべて女性:平均年齢63.4±8.0歳)を対象に,膝内反軽減シューズと一般靴を履いた際の歩行パラメータを比較した。その結果,膝内反軽減シューズを履いて歩くと,足角が有意(p<0.001)に減少し,ストライド長と歩幅は有意(p<0.001)に広がり,歩行速度が有意(p<0.001)に速まった。一方,歩隔,歩行角,立脚時間,両脚支持時間の4項目には有意差は認められなかった。有意差が認められた足角,ストライド長,歩幅,歩行速度の効果量はΔ=-0.34~0.47の範囲にあり,膝内反軽減シューズが変形性膝関節症患者の歩行に及ぼす一定の効果が示唆された。
著者
木村 太祐 西原 賢
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.65-72, 2021-07-31 (Released:2021-08-11)
参考文献数
39
被引用文献数
2 2

[目的]本研究は,各歩行補助具やその有無まで様々な移動形態を有する介護老人保健施設利用者を対象に下肢荷重率(下肢WBR)が歩行補助具の有無・使用状況と関連があるか検証した。[方法]対象者は介護老人保健施設を利用する高齢者68名。移動形態別に,杖なし群・T字杖群・歩行車群の3群に分類した。測定項目は端坐位,立位肢位の下肢WBR,握力,片脚立位,最大10m 歩行,FRT,TUG を測定した。各群の比較検定と下肢WBR に影響を及ぼす因子を検討した。[結果]全ての計測項目は移動形態別各対象群に主効果を認めた。下肢WBR(端坐位)に有意な関連因子として下肢WBR(立位)(β=0.418,p<0.001),握力(β=0.386,p<0.001),下肢WBR(立位)の関連因子として片脚立位(β=0.214,p<0.039),下肢WBR(端坐位)(β=0.526,p<0.001)が抽出された。[結論]下肢荷重率は,歩行補助具を判断する臨床的意思決定の判断材料の有効的な指標の一助になり得る可能性を示唆した。
著者
山内 良祐 牟禮 努 小寺 晶子 加藤 あずさ 大角 しずか 引野 伽乃 池尻 生実 村田 伸 兒玉 隆之
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.107-115, 2023-02-28 (Released:2023-03-02)
参考文献数
29

本研究は,リハビリテーション場面において母とセラピストの声かけが精神運動発達障害児の脳内神経活動に与える影響を検討することにより,「他者」の声かけの違いがどのような情動的な影響を及ぼし,リハビリテーションの介入へどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とした。対象は7 名(平均年齢:4.9±2.9歳)とし,母とセラピストの声かけ条件を8条件とセラピストのみの1条件の計9条件に設定し,各条件間での脳神経活動性について比較した。その結果,母の声かけでは,情動領域,運動領域や認知領域にて脳神経活動を示し,セラピストの声かけでは,言語領域にて脳神経活動を示した。声かけはこれまで運動学習の必須要項として既に立証されている治療効果を促す刺激としてだけでなく,他者がタイミングよく行うことで,情動の陽性変化や認知面でリハビリテーションをより効果的かつ円滑に進めることのできる要素となる可能性が示唆された。
著者
浦嶋 優夢 小俣 杏侑実 八田 友楽 平田 真実 木村 智子
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.19-24, 2022-06-30 (Released:2022-08-03)
参考文献数
34

本研究の目的は,出生時期に低体重であった者(Low birth weight infant:LBWI)と正常体重であった者(normal birth weight infant:NBWI)が成人期を迎えた際の骨量ならびに骨の発育に与える因子に違いが認められるかを確認し,将来の骨関節疾患発症リスクについて検討することである。対象は,本邦でLBWI 急増時期に生まれ,現在成人期にある女子大生を母集団とし,LBWI 群(6名)とNBWI 群(6名)を抽出した。骨量面積率や骨塩量,下腿身長比や体重などの計測とともに,学齢期と思春期の運動時間を聴取し,両群間で比較した。その結果,両群間で骨量面積率などに有意差は認められなかったが,下腿身長比はLBWI 群が有意に低値を示した(p<0.05)。従って,出生時体重の違いは成人期の骨密度には影響を及ぼさないが,LBWI は下腿身長比の短縮という形で骨の発育不全を引き起こす可能性が示唆された。今後,この骨発育不全が引き起こされるメカニズムの解明とともに,LBWI が老年期の骨に与える影響についても追跡調査する必要性があることが示唆された。
著者
相馬 正之
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-7, 2016-04-30 (Released:2016-07-29)
参考文献数
46
被引用文献数
5 1

要旨:歩行運動は,自動的な側面を持つことに加え,加齢の影響を受ける。そのため,転倒を引き起こす何らかの影響を受けることが推察され,研究がされてきた。つまずきによる転倒の原因と考えられていたToe clearance(以下TC)は,高齢者では常に低下しているわけではなく,体幹動揺や歩行遊期中の膝・足関節角度のばらつきがTC のばらつきを生じさせ,TC が低い歩行周期中に偶発的に転倒に結びついている可能性がある。そのTC は,無意識かつ受動的に作られるため,遊脚期中に下肢筋活動の再現性を高めることが重要になる。その方法として,直接的に体幹を安定させることもあるが,遊脚期側下肢を支える立脚期,特に立脚中期から前遊脚期にかけての土台である足部・足趾機能の向上も選択肢の1つとなる。この足部・足趾機能を代表するものに足趾把持力があり,姿勢制御,前方への推進力の作用もあると推測されている。足趾把持力は,足趾屈筋のみならず,足部の柔軟性や下腿筋の同時収縮,特に前脛骨筋の筋活動量が重要である。このように歩行時の下肢末梢部の作用・機能は,転倒防止やバランス機能,運動制御の観点からも重要であるため,着目していく必要がある。
著者
古後 晴基 満丸 望 岸川 由紀
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.51-56, 2018-07-31 (Released:2018-10-05)
参考文献数
24

[目的]本研究の目的は,Osgood-Schlatter disease(OSD)発症後の膝伸展に関与する身体因子の特徴を明らかにすることであった。[対象と方法]高等学校男子サッカー選手でOSD 発症者41名(54膝),非発症者160名(320膝)を対象とし,膝伸展に関与する身体因子5項目を測定した。OSD の発症膝と非発症者の両膝の2群間で,身体因子を比較した。[結果]OSD の発症膝は非発症膝と比較して,大腿直筋筋厚が有意に高値を示し,中間広筋筋厚が有意に低値を示した。また,大腿四頭筋筋力が有意に低値を示し,ハムストリングスの筋伸長性が有意に高値を示した。[結語]OSD 発症後の膝伸展に関与する身体因子の特徴は,大腿直筋筋厚が厚く,中間広筋筋厚は薄いことが示され,大腿四頭筋筋力が低く,ハムストリングスの筋伸長性は高いことが示唆された。
著者
徳永 智史 堀田 和司 藤井 啓介 岩井 浩一 松田 智行 藤田 好彦 若山 修一 大藏 倫博
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.73-79, 2020-07-22 (Released:2020-08-04)
参考文献数
36
被引用文献数
3

【目的】地域在住高齢者におけるアパシーの身体活動量に及ぼす影響を明らかにする。【対象】2017年7月に茨城県笠間市で行われた長寿健診に参加した地域在住高齢者328名とした。【方法】アパシー評価としてやる気スコア,身体活動量評価としてPhysical Activity Scale for the Elderly,抑うつ評価としてGeriatric Depression Scale 短縮版(GDS‐15),ソーシャルネットワーク評価としてLubben Social Network Scale 短縮版(LSNS‐6),身体機能評価として握力,5回椅子立ち上がり,開眼片足立ち,Timed up and go test,長座体前屈,認知機能評価としてファイブ・コグ,Trail Making Test(TMT)を実施した。【結果】アパシーのみ呈した者の割合は23.2%,抑うつのみ呈した者は12.2%,アパシーと抑うつを合併していた者は15.2%であった。重回帰分析の結果では,身体活動量に対してやる気スコアやLSNS‐6,長座体前屈,ファイブ・コグ,TMT が有意に影響を及ぼしていた。GDS‐15の有意な影響は認められなかった。【結語】アパシーと抑うつは独立して存在し,身体活動量には社会交流や身体機能,認知機能などの多要因が影響しているが,アパシーもその一つである可能性が示された。
著者
岡村 和典 金井 秀作 沖井 明 江川 晃平 山本 征孝 沖 貞明
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.177-182, 2017-01-30 (Released:2017-04-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

【目的】本研究の目的は,足部内在筋が歩行中の足関節モーメントを変化させる機能を有しているか検証することである。【対象と方法】健常成人男性11名を対象とした。歩行立脚期における足部内在筋の収縮力を電気刺激によって強化し,それに伴う足関節モーメントの変化を測定した。測定には三次元動作解析装置と床反力計を使用した。【結果】足部内在筋への電気刺激は,歩行立脚期における最大内部足関節回内モーメントを有意に増加させた(p<0.05)。一方,底屈および外転モーメントに有意差は確認されなかった。【結語】本研究の結果からは,回内作用を持つ足関節底屈筋の活動の増加だけでなく,回外作用を持つ足関節底屈筋の活動の低下も推察される。これは,足部内在筋に歩行場面における足部外在筋の活動を軽減させる機能が備わっていることを示唆している。
著者
坂本 飛鳥 星 賢治 岸川 由紀 田中 真一 蒲田 和芳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-8, 2020-04-30 (Released:2020-05-22)
参考文献数
29
被引用文献数
1

[目的]妊娠・出産に関連する骨盤痛が妊娠中・産後女性の歩行に及ぼす影響を,文献レビューにより明らかにすることを目的とした。[方法]6つの文献データベースとハンドサーチにて検索した論文について,採択基準(妊娠期または産後の骨盤痛を有する女性の歩容の特徴)をもとに,該当論文を1)歩行速度,2)歩隔・歩幅・歩行周期,3)骨盤-胸郭,体幹,股関節,COP の3つの項目について整理した。文献の評価にはRisk of Bias Assessment Tool for Nonrandomized Studies (RoBANS)を使用した。[結果]採択論文は6編であった。6編より,妊娠中に骨盤痛があると歩行速度は低下し,歩幅は短く,両脚支持期の延長を認めたが,歩隔には有意差を認めなかった。胸郭・骨盤回旋の動きは増大し,骨盤の前後傾と股関節伸展可動域は減少した。[結論]妊娠中に骨盤痛があると顕著な歩容の変化が生じる。一方,産後における骨盤痛の歩容への影響は不明である。