- 著者
-
宮腰 幸一
- 出版者
- 日本言語学会
- 雑誌
- 言語研究 (ISSN:00243914)
- 巻号頁・発行日
- vol.157, pp.113-147, 2020 (Released:2020-12-10)
- 参考文献数
- 34
本稿は日本語受動の新たな類型論を提案・実証する。主な提案は次の7つである。[I]日本語受動は[1]受影主受動と[2]経験主受動に大別され,それぞれさらに下位分類される。[II]ラレルは2(+1)項助動詞であり,意味と統語の両レベルで[1]よりも[2]の方が階層的に上位の構造を持ち,[2]の中でもあるタイプ([A]直接・[B]所有1)よりも別のタイプ([C]所有2・[D]間接)の方がより複雑な構造を持っている。[III]すべてのタイプにおいて意味レベルの束縛が重要な役割を果たす。[IV]受動の本質的特性である〈受影性〉は6つの認可条件と3つの階層で複合的に規定される。[V]日本語受動の典型は[2A]タイプであり,それは主体的把握・内界表出文である。[VI]それがプロトタイプであることは三重受影性階層から定理として導き出される。[VII]非典型的なタイプも,受影主や複合事象/複雑述語文の一般的な派生度測定基準/方法の導入により,原理的に説明される。