著者
長谷川 雛 酒井 麻衣 若林 郁夫 宮西 葵
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.197-203, 2021 (Released:2021-08-26)
参考文献数
16

三重県の鳥羽水族館で飼育されているイロワケイルカ(Cephalorhynchus commersonii)の成熟オス1頭と成熟メス2頭を対象に社会行動を分析した.メスは2頭とも次年に出産したため,本種の妊娠期間から逆算しおおよその受胎日を推定した.オスによるメスへのつきまとい行動を119日間毎日観察し,つきまといが多い時期をメスが発情している時期と推定した.その結果,発情周期は約28日と推定された.並泳,追尾,並列静止,接触,ラビング,オスによるメスの生殖孔への接触,オスがペニスを出してメスに接近する社会行動を記録した.オスと発情時のメス間の社会行動の頻度は,そのメスの非発情時および妊娠中や,オスと発情していない他のメス間での社会行動の頻度よりも高かった.また,追尾と並泳の持続時間は,メス発情時に他の状態の時よりも有意に長かった.これらの行動学的特徴は,非侵襲的にメスの発情を知るための指標となりうる.