著者
長谷川 雛 酒井 麻衣 若林 郁夫 宮西 葵
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.197-203, 2021 (Released:2021-08-26)
参考文献数
16

三重県の鳥羽水族館で飼育されているイロワケイルカ(Cephalorhynchus commersonii)の成熟オス1頭と成熟メス2頭を対象に社会行動を分析した.メスは2頭とも次年に出産したため,本種の妊娠期間から逆算しおおよその受胎日を推定した.オスによるメスへのつきまとい行動を119日間毎日観察し,つきまといが多い時期をメスが発情している時期と推定した.その結果,発情周期は約28日と推定された.並泳,追尾,並列静止,接触,ラビング,オスによるメスの生殖孔への接触,オスがペニスを出してメスに接近する社会行動を記録した.オスと発情時のメス間の社会行動の頻度は,そのメスの非発情時および妊娠中や,オスと発情していない他のメス間での社会行動の頻度よりも高かった.また,追尾と並泳の持続時間は,メス発情時に他の状態の時よりも有意に長かった.これらの行動学的特徴は,非侵襲的にメスの発情を知るための指標となりうる.
著者
小野 譲司 酒井 麻衣子 神田 晴彦
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.6-18, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
26

サービス分野におけるカスタマイゼーションは,従来は人間が行っていたサービス活動をテクノロジーに代替する動きが進みつつある。人間による柔軟性とテクノロジーによる標準化のバランスをどう取るかは,現代のサービス設計における重要な課題である。本研究では,人間によるサービスとテクノロジーベースのサービスの経験が,顧客のサービス品質評価に与える影響について実証研究を行った。その結果,どちらのサービス経験を選択するかによって,顧客期待が品質評価に与える影響と,接客サービスが品質評価に与える影響が異なること,顧客の経験値の違いによって効果が異なることも明らかになった。最後にサービス・カスタマイゼーションに関する実務的示唆と今後の課題を示した。
著者
小川 孔輔 照井 伸彦 南 知惠子 余田 拓郎 小野 譲司 藤川 佳則 酒井 麻衣子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究プロジェクトでは、米国版顧客満足度指数(ACSI)の理論モデルを参考に、日本版(JCSI)を完成させた。JCSIの開発完了後、日本の30業種約300社のサービス業に適用されている(2010年から商用開始)。蓄積データを用いて、研究メンバーは、各自の関心に従い理論・応用研究を推進してきた。研究成果としては、顧客感動・失望指数の開発、推定法の工夫、スイッチング・バリアへの影響、CS優良企業の事例研究等を挙げることができる。
著者
酒井 麻衣 鈴木 美和 小木 万布 柏木 信幸 古田 圭介 塩湯 一希 桐畑 哲雄 漁野 真弘 日登 弘 勝俣 浩 荒井 一利
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ハクジラ亜目のホルモンレベル・行動とストレス・心理的幸福との関係を明らかにするため、行動観察および垢と血中のホルモン濃度測定を行った。対象動物は期間中大きな疾病はなく、得られた行動頻度・ホルモンレベルの時、おおむね健康な状態と言えた。顔を壁にこすりつける行動が比較的多かった期間に、血中および垢中コルチゾール濃度が高く、この行動がストレスの現れであることが示唆された。静止時間が多いときほど血中βエンドルフィン濃度が低く、運動量と関係があることが示唆された。また、中層での静止時間が長いほど、血中コルチゾール濃度が高いことがわかり、長時間静止する行動がストレスの現れである可能性が考えられた。
著者
高橋 力也 小林 希実 比嘉 克 酒井 麻衣
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.143-146, 2021-12-24 (Released:2022-02-28)
参考文献数
10

本研究は,ミナミハンドウイルカ(Tursiops aduncus) における生理学的知見の蓄積を目的として,餌の消化管通過速度を測定する実験を行った。実験は飼育下のミナミハンドウイルカのオス1頭を対象とし,3日間1日1回行われた。赤色色素を粉のままゼラチン製の薬用カプセルに梱包し,餌のカラフトシシャモの体内に挿入し給餌した。着色餌の給餌後,水中観察窓から連続観察を行った。着色餌の給餌から,初めて糞に赤色が確認されるまでの期間をIPT (Initial Passage Time) と定義した。着色糞は3日間全ての実験で確認された。着色糞が最初に観察されるまでの経過時間(IPT) は平均254 ± 20.4 分(n=3)であった。先行研究における同属のハンドウイルカの平均IPTと比べ近い値となった。本研究により,ミナミハンドウイルカは摂餌から最短で4時間から6時間程度で排泄し,加えて餌が消化管内に20時間以上留まる可能性があることが通常色の糞の観察から示唆された。
著者
酒井 麻衣
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

伊豆諸島御蔵島のミナミハンドウイルカは、胸ビレで相手をこする社会行動(ラビング)を、左ヒレで行う傾向がある。この現象が、イルカに共通して現れる行動形式なのか、後天的に獲得された行動が伝播した個体群特有の行動形式(文化)であるのかを明らかにする。そのために、ラビングの左右性の発達・個体群間比較・種間比較を行う。本年度は、御蔵島に約40日間滞在しミナミハンドウイルカの水中行動のビデオデータを収集した。また、能登島に定住する本種8個体に対し予備調査を行い、水中観察可能であることを確認した。篠原正典氏より本種の小笠原個体群の水中ビデオデータを借用し、ラビングの左右性を解析中である。鳥羽水族館のイロワケイルカ4個体(オトナオス1、ワカオス1、オトナメス2)を対象に、ラビングのビデオ撮影及び目視観察を行った。その結果、オトナオスは154例のうち97%、ワカオスは74例中81%で左ヒレを使用することがわかった。オトナメスは12例中42%、11例中82%で左ヒレを使用した。今後、メスのデータを増やす予定である。Kathleen Dudzinski氏より、野外の生簀に蓄養されているハンドウイルカ27個体の水中ビデオデータを借用し、ラビングの左右性を分析した。その結果、左ヒレを使用した例は735例中54%で大きな偏りはなかった。23個体の使用ヒレの偏りを検定したところ、1個体のみ有意に左ヒレを多く使用していたが、有意に右ヒレを多く使用する個体はいなかった。Kathleen Dudzinski氏より、バハマの野生マダライルカの水中ビデオデータを借用し、ラビングの左右性を分析した。その結果、左ヒレを使用した例は499例中53%で大きな偏りはなかった。18個体において使用ヒレの偏りを検定したところ、2個体のみ有意に左ヒレを多く使用していたが、有意に右ヒレを多く使用する個体はいなかった。今年度の解析で、使用ヒレの左右性は、種によって違いがあることが示唆された。
著者
酒井 麻衣
出版者
東海大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

「並泳の左右性の分析・接触行動の左偏向の個体発達の分析・母子間の接触行動の左右性の比較・接触行動の個体群間比較」のために、2014年6月、7月、9月に伊豆諸島御蔵島にて野生ミナミハンドウイルカを対象に接触を伴う社会行動・同調行動を水中ビデオ撮影し、データ収集を行った。「並泳・接触行動の左右性の種間比較」のために、バハマ諸島にて撮影された野生マダライルカの接触行動の分析を行った。2003年から2011年に撮影されたビデオのデータを分析した結果、532例のflipper rubbing(ラビング、胸ビレで相手をこする行動)のうち251例が右ヒレで、281例が左ヒレで行われていた。6例以上のラビングが観察された18個体のうち、2個体において有意に左ヒレを多く使用していた。一方、有意に右ヒレを多く使用する個体はいなかった。一方、flipper touching(タッチ、胸ビレで相手に触る行動)は、119例中、65例が右ヒレ、54例が左ヒレで行われた。6例以上のタッチが観察された1個体においては有意な偏向は見られなかった。野生マダライルカにおけるラビングの分析結果(集団のうちの一部に左偏向の個体がいること、右偏向の個体がいないこと)は、これまで調べてきた飼育ハンドウイルカ(12頭中6頭が左偏向)、野生ミナミハンドウイルカ(20頭中9頭が左偏向)、飼育マダライルカ(4頭中3頭が左偏向)と同様であり、ラビングにおける左偏向はハクジラ亜目の中で共通している可能性が高まった。また、飼育イロワケイルカでは4頭中4頭すべてが左偏向を示し、ハクジラ亜目の中でも偏向の強さに種差がある可能性が考えられた。
著者
吉岡 基 幸島 司郎 天野 雅男 天野 雅男 荒井 一利 内田 詮三 大谷 誠司 小木 万布 酒井 麻衣 白木原 美紀 関口 雄祐 早野 あづさ 森 恭一 森阪 匡通
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ミナミハンドウイルカの保全のために必要な基礎情報を得るため,分布や移動経路の把握,地域個体群間の関係に関する検討,行動解析,繁殖生理値の収集を行った.その結果,(1)伊豆鳥島周辺に本種が分布し,その個体群は小笠原や御蔵島の個体群との間に関係を有すること,(2)奄美大島での調査により,本種が同島周辺を生活圏とすること,(3)御蔵島個体群の社会行動の分析から,その頻度が性や成長段階によって異なること,(4)飼育個体の性ホルモン分析から,オスの精子形成は春~秋により活発になることなどが明らかになった.
著者
酒井 麻衣
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2008

小型ハクジラ亜目は、接触や同調を用いてコミュニケーションを行う。本研究では、その詳細や発達・進化を明らかにすることを目的とし、野生個体の水中観察、飼育個体の観察、バイオロギングの3つの手法を用いて研究を行った。その結果、ミナミハンドウイルカの呼吸同調が親和的社会行動の一部であることを示した。また、マイルカ科とネズミイルカ科では胸ビレを用いる社会行動に相違がみられることや、社会性が乏しいとされてきたスナメリが他個体と社会関係を築く可能性を示した。