著者
富士本 百合子 安達 潤
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.15-21, 2020-02-29 (Released:2021-02-28)
参考文献数
6

本研究の目的は、自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)のある当事者が運動制御を行なう場面や自己身体を認識する場面で、視覚情報と体性感覚情報の統合について検討することである。能動的な運動制御である描画運動をする図形描画課題と、受動的な触刺激位置弁別課題の2つの身体関連課題を設定し、検討を行なった。各課題ともに、視覚情報あり条件と視覚情報なし条件の2つ条件で行ない、視覚情報の有無が課題遂行に及ぼす影響を検討した。その結果、ASDのある当事者は視覚情報が得られず体性感覚情報のみを頼りに描画するとき、描画運動の初期で描画行動の調整が困難になることが示された。また触刺激位置弁別課題では、視覚情報が得られずに触刺激の提示された身体位置を判断する際にASDのある当事者は、課題の難度に左右されず身体表象の明確さに個人差が大きいことが示された。