著者
長 宗雄 富山 淳
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

位相力学系に対応する作用素環としては通常はC-クロス積が考えられているがその前にもっと密接に関係するBanach-algebraクロス積がある。これらはXが1点のときはそれぞれl^1(Z), C(T)(Zは整数群、Tはトーラス)となり両者の大きな違いは前者には自己共役ではない閉イデヤルが存在することがある。交流理論としてはこの非可換l^1-algebraの構造が大きな研究課題になるべきであるがこれまでこのクロス積の研究は殆どなかった。主要結果の一つは上の差異を踏まえた次の結果である。定理:lの閉イデヤルが全て自己共役になるのは力学系がfree(周期点がない)の時のみに限る。次に、上の二つのalgebraのなかでC(X)と可換な元の全体(C(X)のcommutant)を考えるとこれ等はともに極大可換なBanach-algebraになりそれぞれのnon-zero閉イデヤルとはnon-zeroな共通部分を持つ。この重要な性質はCについては証明されているが、characterの空間の詳細な解析を行い、合わせて上記の二つのmaximal abelian subalgebraへのバナッハ空間としての射影が存在するための必要十分な力学系の条件をもとめた。Semi-hyponormal作用素がconvexoidであるかどうかは、これまで約20年間解決できずにいた。この問題について、Linear and Multilinear Algebraから発表した論文「A remark onnumerical range of semi-hyponormal operators」においてunilateral shift UからT=aU+bUとしS=T^2として作る作用素はすべてconvexoidであることを示した。この結果はこの問題の一つの決定的な結果であり、ほぼ達成できた。次に、バナッハ空間上の作用素について、Polaroid作用素を研究し、この作用素がsingle value extension propertyをもつなら、Weylの定理が成立することを示した。また、quasi-similarな作用素については、Bishoppropertyをもつ作用素であればPolaroid性が同値であることを示した。これらの結果は、Journal of Mathematical Analysis and Applicationsから「Polariod type operators underquasi-affinities」として発表し、作用素論の指導的数学者であるRaul Curto氏から高い評価をいただいた。ヒルベルト空間上の作用素の特性関数の研究においてはp-hyponormal作用素に特性関数を導入し、スペクトルの特長付けを行った。さらにdeterminantの積分表示を得ることができた。この結果はMath. Proc. Royal Irish Academyから「Determinants ofcharacteristic functions of p-hyponormal operators」として発表した。