著者
富岡 優子 北澤 菜月 大橋 有佳
出版者
北九州市立自然史・歴史博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

藕糸織(ぐうしおり)は蓮の繊維から作られた糸(藕糸)を使用した織物である。植物学者大賀一郎は寛文11(1971)年の黄檗宗開祖・隠元隆琦の賛を有す福聚寺(北九州市)の「藕糸織仏画」を日本最古の藕糸織と鑑定した。しかし本品が藕糸という科学的根拠は示されておらず、2018年に赤外分光分析装置と実体顕微鏡を用いた非破壊の分析を改めて行った。結果、当該作品は藕糸と絹糸を撚った糸が使用されている可能性がきわめて高いことが判明したが、当該事例のように科学的根拠を伴わない藕糸織が多々ある。本研究は藕糸織作品について非破壊による再調査を行い、藕糸織がいかなるものか、客観的に提示することを目的とする。