著者
富永 真己 中西 三春
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.468-476, 2021-07-15 (Released:2021-07-20)
参考文献数
24

目的 国内では,地域包括ケアシステムにおける社会資源の要である介護施設の介護人材の不足が深刻さを増す中,介護職においては就業継続の意向の高さも報告される。本研究は質的研究により,介護職における就業継続の意向の要因について,介護の仕事に関する肯定的側面から明らかにすることを目的とした。方法 半構造化面接を用いた帰納的アプローチによる質的記述的研究法を用いた。近畿圏の11か所の介護施設のユニットリーダー計14人を研究対象者とした。うち女性は9人で,平均年齢は35.0(±6.45)歳であった。2人もしくは3人1組の共同インタビューを2018年8月~11月に計6回実施した。インタビューガイドを用いて面接を実施し,内容は対象者の許可を得て録音した後,逐語録を作成した。逐語録データから介護職における就業継続の意向について,介護の仕事に関し肯定的側面から語られた記述をコードとして抽出し,質的帰納的に分析した。結果 27コードが抽出され,さらに3カテゴリー,すなわち《高齢者への愛着と接することの楽しさ》《人生における先輩の最期の時間への思いと共感》《利用者と家族からの心理的支え》の3サブカテゴリ—から成る【介護の仕事に対する愛着】と,《理性的な職場成員の結束力》《職場内の縦横の良好なつながり》《職場外での同業種とのつながりの機会》の3サブカテゴリーから成る【職場の結束力と職場内外のつながり】,および《上司の心理的報酬と支援》《目標の共有と現場目線の職場運営》《教育体制とキャリア開発の機会》の3サブカテゴリーから成る【支援的な現場目線の職場運営と人材開発】が抽出された。語りから,介護職が抱く仕事に対する愛着と,それに影響を及ぼす人間関係を基盤とした結束力やつながり,職場運営や教育体制といった職場環境が,介護職における就業継続の意向の要因であることが確認された。需要が急速に増す国内の介護人材の確保と定着に向け,仕事への愛着を育む支援と同時に,人間関係を基盤とした職場環境の整備の必要性が示唆された。結論 介護施設のユニットリーダーを対象とした質的記述的研究法により,【介護の仕事に対する愛着】【職場の結束力と職場内外のつながり】,及び【支援的な現場目線の職場運営と人材開発】が介護職における就業継続の意向の要因として抽出され,介護人材の確保と定着の方策に向けた示唆が得られた。
著者
富永 真己 小田 美紀子
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.7-17, 2017

<p>病院の看護師長を対象に主観的評価による看護師長業務の負担の実態とともに,それらと蓄積疲労度及び長時間労働との関係を検討することを目的に,A県の全病院の看護師長(<i>N</i>=1,479)を対象に調査を実施した(回収率57%)。基本属性,組織特性,就業特性,看護師長業務とその負担を問う項目,蓄積疲労度に関する尺度を調査票に含めた。結果,看護師長業務の項目の中で"スタッフの勤務表の作成と管理"は最も主観的仕事時間が長く,困難度が高かった一方,約3分の1の項目で5年未満の経験年数の看護師長は困難度をより強く認識していた。約半数が週当たり10時間以上の残業を,約7割が自宅への持ち帰り残業を行っていた。また就業特性で長時間労働の状況が認められた看護師長は有意に蓄積疲労度が高かった。快適職場づくりの要となる看護師長自らが就業状況の改善により,長時間労働の見直しとともに蓄積疲労の改善に努める必要性が示唆された。</p>
著者
富永 真己 小田 美紀子
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.7-17, 2017 (Released:2017-04-13)
参考文献数
20

病院の看護師長を対象に主観的評価による看護師長業務の負担の実態とともに,それらと蓄積疲労度及び長時間労働との関係を検討することを目的に,A県の全病院の看護師長(N=1,479)を対象に調査を実施した(回収率57%)。基本属性,組織特性,就業特性,看護師長業務とその負担を問う項目,蓄積疲労度に関する尺度を調査票に含めた。結果,看護師長業務の項目の中で“スタッフの勤務表の作成と管理”は最も主観的仕事時間が長く,困難度が高かった一方,約3分の1の項目で5年未満の経験年数の看護師長は困難度をより強く認識していた。約半数が週当たり10時間以上の残業を,約7割が自宅への持ち帰り残業を行っていた。また就業特性で長時間労働の状況が認められた看護師長は有意に蓄積疲労度が高かった。快適職場づくりの要となる看護師長自らが就業状況の改善により,長時間労働の見直しとともに蓄積疲労の改善に努める必要性が示唆された。