著者
富永昌治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.302-311, 1993-02-15
被引用文献数
9

相互反射現象はシーンの見えを大きく変えることがあるのでコンピュータビジョンの分野でしぱしば重要な問題となる。本諭文では、拡散反射表面間の相互反射を、カラー反射モデルを用いて解析する方法を示す。まず、2つの凸物体表面からの反射光は共通の相互反射成分と表面に固有の拡散反射成分からなる2色性反射モデルで記述できる。解析の方法は、Funt?Drewの色空間解析を一般化して、厳密なスペクトル解析と実用的な画像解析に分けて記述する。最初に、2表面から計測した反射光のスペクトル分布から、共通相互反射成分と固有拡敵反射成分のスペクトル分布を推定する方法を示す。そして、これらのスペクトル情報がわかれば、表面の分光反射率と照明光の分光電力分布という重要な物理量が求まることを示す。次に、画像解析のために同様な解析法を3次元色空間に適用する。特に固有物体色の絶対的な色ベクトルを推定するアルゴリズムを提案する。最後に、2枚の色紙を用いる実験で解析法の妥当性を検討する。スペクトルデータより各色紙の分光反射率と照明光の分布が得られた。計測画像より相互反射色の色度と各色紙の固有色が推定でき、原画を2つの反射成分に分離できた。さらに推定の精度も確認した。