- 著者
-
石井 象二郎
井口 民夫
金沢 純
富沢 長次郎
- 出版者
- 日本応用動物昆虫学会
- 雑誌
- 日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.4, pp.269-273, 1984-11-25
- 被引用文献数
-
7
イラガ<i>Monema (Cnidocampa) flavescens</i> WALKERの幼虫は非常に硬い繭をつくる。その硬さは物理的な構造と化学的な組成に由来する。<br>繭層は異質の4あるいは5層からなる回転楕円体で,繭層率は20%を越えるものが多い。繭層には蛋白質が約34%含まれ,その蛋白質は絹糸蛋白と,吐出液に含まれる蛋白質である。後者は絹糸の網目に塗り込まれる。営繭の当初淡褐色であった繭は時間の経過に伴って濃褐色となり,硬化する。硬化した繭層の蛋白質にはβ-アラニンの含量が高い。繭の硬さは化学的には硬化された蛋白質がおもな要因で,それが絹糸の網目にきっちりと詰まっているのである。<br>繭層にはカルシウムが多く含まれるが,それはシュウ酸カルシウムとしてマルピーギ管で生成されたものであり,主として繭の白斑部に局在している。カルシウム含量が高いことは,繭の硬さに直接の関係はないであろう。