4 0 0 0 OA イラガの繭

著者
石井 象二郎 井口 民夫 金沢 純 富沢 長次郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.269-273, 1984-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1 7

イラガMonema (Cnidocampa) flavescens WALKERの幼虫は非常に硬い繭をつくる。その硬さは物理的な構造と化学的な組成に由来する。繭層は異質の4あるいは5層からなる回転楕円体で,繭層率は20%を越えるものが多い。繭層には蛋白質が約34%含まれ,その蛋白質は絹糸蛋白と,吐出液に含まれる蛋白質である。後者は絹糸の網目に塗り込まれる。営繭の当初淡褐色であった繭は時間の経過に伴って濃褐色となり,硬化する。硬化した繭層の蛋白質にはβ-アラニンの含量が高い。繭の硬さは化学的には硬化された蛋白質がおもな要因で,それが絹糸の網目にきっちりと詰まっているのである。繭層にはカルシウムが多く含まれるが,それはシュウ酸カルシウムとしてマルピーギ管で生成されたものであり,主として繭の白斑部に局在している。カルシウム含量が高いことは,繭の硬さに直接の関係はないであろう。
著者
石井 象二郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.5-8, 1984-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
2

イラガMonema (Cnidocampa) flavescensの幼虫は非常に硬い繭をつくる。この繭から成虫が脱出できるのは,幼虫が繭をつくるときに,あらかじめ脱出孔の蓋となるところを溝状に傷つけ,繭の層を薄く弱くしておくからである。成虫は羽化に際し脱出孔の蓋を内部から押し上げて開き,そこからはい出す。溝状の傷は幼虫の胸部の肉角とその刺毛により繭の内側を圧迫してつけられたものであると考えられる。
著者
西田 律夫 桑原 保正 深海 浩 石井 象二郎
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 20 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.372-379, 1976-09-20 (Released:2017-08-18)

From the cuticular wax of the female German cockroach, Blattella germanica (L.), two components of sex pheromone responsible for male wing-raising were isolated as crystalline forms, and characterized as 3,11-dimethyl-2-nonacosanone (Compound A, Ia) and 29-hydroxy-3,11-dimethyl-2-nonacosanone (Compound B, Ib). Compound A and B independently elicits the wing-raising behavior, and Compound B is almost 10 times more active than Compound A. Both of synthetic compounds also exhibited the identical biological activity to those of natural ones, respectively. Besides Compound A and B, a minor component of the pheromone Compound C) was detected, and was identified as 29-oxo-3,11-dimethyl-2-nonacosanone (Ic). Of two asymmetric carbon atoms in Compound A, carbon-3 was concluded to be S-configuration. Several analogues of the pheromone were synthesized in order to figure out the effect of structural modification of the pheromone on the biological activity.
著者
石井 象二郎 平野 千里
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.198-202, 1958-09-01 (Released:2009-02-12)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

ニカメイガ幼虫の生育と水稲への窒素施用量との関係をあきらかにするため,土耕栽培された水稲を使用して,野外飼育試験ならびに無菌飼育試験をおこなった。両飼育試験の結果,幼虫の生育は少窒素水稲茎でよりも多窒素区水稲茎で良好であった。一方多窒素区水稲茎は少窒素区水稲茎よりも多量の窒素化合物を含有していた。また炭水化物含量にかんしてはこれと逆の関係が認められた。これらの結果は,ニカメイガ幼虫の生育と飼料である水稲茎中の窒素化合物ならびに炭水化物含量との間に非常に密接な関係のあることを示している。合成飼料を使用した前報の実験結果と考えあわせて,多窒素区水稲茎を摂食した幼虫のすぐれた生育は,水稲茎の化学組成202 日本応用動物昆虫学会誌 第2巻 第3号が幼虫の飼料として栄養的にすぐれていることに基因しているものと考えられる。
著者
石井 象二郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.334-337, 1964-12-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
9
被引用文献数
3 6

マタタビにヨツボシクサカゲロウChrysopa septenpunctata WESMAELの雄が強く誘引されることは古くから観察されていたが,その誘引物質は不明であった。マタタビの実およびその虫えいから有効物質の抽出分離を試みた結果,その物質はエーテル可溶物の中性分画に含まれ,水蒸気蒸溜により溜出される。溜出物をカラムクロマトグラフで分離を繰返し,有効成分を含む分画を赤外吸収スペクトルで調べた。水蒸気蒸溜溜出物中に含まれるラクトンを分解除去しても,なお誘引性を示した。イソイリドミルメシンには誘引性はない。誘引物質は一種のアルコールと考えられる。本物質の感覚受器は雄の触角に分布している。雌が誘引されないのは,雌の個体数が特に少ないためではない。
著者
石井 象二郎 井口 民夫 金沢 純 富沢 長次郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.269-273, 1984-11-25
被引用文献数
7

イラガ<i>Monema (Cnidocampa) flavescens</i> WALKERの幼虫は非常に硬い繭をつくる。その硬さは物理的な構造と化学的な組成に由来する。<br>繭層は異質の4あるいは5層からなる回転楕円体で,繭層率は20%を越えるものが多い。繭層には蛋白質が約34%含まれ,その蛋白質は絹糸蛋白と,吐出液に含まれる蛋白質である。後者は絹糸の網目に塗り込まれる。営繭の当初淡褐色であった繭は時間の経過に伴って濃褐色となり,硬化する。硬化した繭層の蛋白質にはβ-アラニンの含量が高い。繭の硬さは化学的には硬化された蛋白質がおもな要因で,それが絹糸の網目にきっちりと詰まっているのである。<br>繭層にはカルシウムが多く含まれるが,それはシュウ酸カルシウムとしてマルピーギ管で生成されたものであり,主として繭の白斑部に局在している。カルシウム含量が高いことは,繭の硬さに直接の関係はないであろう。