著者
酒井 宏昌 富田 康敬
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.801-803, 2005-12

56歳男性.患者は右背部痛および発熱を主訴に近医を受診,腹部CTで右水腎症を指摘され,著者らの施設へ紹介となった.既往歴として,27歳時より慢性腎不全に対する血液透析中であった.受診時,著明な水腎症を認め,手術の適応と判断したが患者の同意が得られず,経過観察を行ったところ,約3ヵ月後に右背部痛が増強し,今度は入院となった.入院時,膿腎症が後腹膜へ広範に波及し,敗血症性ショック,DICを合併した状態であり,メシル酸ガベキサート,ドパミン,抗生剤投与を開始し,エンドトキシン吸着療法を行った後,後腹膜膿瘍ドレナージ術を施行した.術後,ドレーンからの排膿が持続したため,最終的に右腎摘除術を行うに至ったが,術後経過は良好であった
著者
福井 準之助 山口 建二 仲間 三雄 富田 康敬 原田 勝弘 小俣 和一郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.1561-1566, 1985-10-20

71歳,16歳,23歳女性に生じた3例の心因性尿閉を報告する.全症例共,神経学的検査で異常なく,器質的下部尿路閉塞も認められなかった.2症例で尿閉は"emotional stress"の後に生じた.症例1では両側VURと軽度の肉柱形成膀胱を認めたが,症例2と症例3では通常の泌尿器科検査では異常がなかった.全症例で膀胱容量は500ml以上で尿流動態検査にて排尿中の外括約筋のaction potentialの増大を認めた.精神科的考察では,症例1はdepressionの1つの型であり,抗うつ剤の投与で尿路症状の改善をみた.症例2はヒステリーであり,精神安定剤と自律神経訓練法により尿路症状の改善をみた.症例3は神経分裂病によるもので,種々の治療に対し抵抗性であった.結婚と共に症状の消失をみたが,その後離婚し,再び残尿の増大を認められた.心因性尿閉の治療は,泌尿器科医と精神科医との協力の下でなされるべきである.