著者
後長 孝佳 服部 友紀 安藤 雅規 波柴 尉充 富野 敦稔 宮部 浩道 加納 秀記 津田 雅庸 平川 昭彦 武山 直志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.546-550, 2015-06-30 (Released:2015-06-30)
参考文献数
10

近年流通している危険ドラッグの主な成分は,合成カンナビノイドと合成カチノン系化合物である。今回,合成カチノン系化合物を含有する「Sex Bomber」を繰り返し飲用し,1カ月間に2度,同様の重篤な症状を呈した急性中毒例を経験した。症例は30歳代男性。3週間前から「Sex Bomber」を飲用していた。興奮・異常行動を認めるようになり,救急搬送された。来院時,興奮・不穏・頻脈・発汗の他,乳酸アシドーシス,横紋筋融解,肝障害,急性腎障害を認め,多臓器障害の状態であった。退院後も「Sex Bomber」の飲用を続けており,1カ月後,再び前回と同様に多臓器障害の状態で搬送された。2回とも経過中にDICに陥ったが集中治療管理により,約1週間で退院となった。合成カチノン系化合物は,組織移行性が高く作用が強力であるため,発症は急速かつ激烈である。急性中毒症例では多臓器不全をきたし死亡する例も散見されており,これら化合物に対する知識に基づいた的確な管理が必要である。