著者
北村 淳 宮部 浩道 植西 憲達 加納 秀記 平川 昭彦 原 克子 小宮山 豊 山中 克郎 武山 直志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.711-715, 2014-10-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
10
被引用文献数
1

致死量の眠気予防薬を服用した急性カフェイン中毒の2 例を経験した。症例1:20代の男性。市販の眠気予防薬を大量内服(無水カフェイン計8g)した。入院後,鎮静薬投与下においてもカフェインの作用による興奮が強く,入院2日目まで痙攣を認めた。第20病日に退院となった。症例2:30代の男性。市販の眠気予防薬を大量内服(無水カフェイン計14g)した。入院後ただちに,血液吸着および血液透析を施行した。人工呼吸管理中に興奮や痙攣などを認めず,第11病日に退院となった。両症例のカフェインおよびカフェイン代謝産物の血中濃度を経時的に測定したところ,血液吸着および血液透析後に明らかな減少を認めた。臨床所見も考慮すると,血液浄化法の早期導入がカフェイン中毒に奏功したと考えられた。致死量を内服した急性カフェイン中毒には,血液吸着に血液透析を併用した迅速な血液浄化法も有効な治療手段の一つであると考えられた。
著者
竹中 信義 平川 昭彦 加納 秀記 津田 雅庸 武山 直志 服部 友紀
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.672-677, 2017-10-31 (Released:2017-10-31)
参考文献数
10

トラベルミン®は中枢性制吐薬および鎮暈薬として市販されており,成分は抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミンサリチル酸塩とキサンチン誘導体のジプロフィリンである。今回,致死量を超える量を内服した急性中毒例を経験した。症例:24歳男性。発熱,不穏状態のため当院に搬送され,口腔内乾燥,瞳孔散大,白血球高値,横紋筋融解を認めた。頭部CT,髄液検査,トライエージDOA®では異常所見を認めず,原因不明の意識障害として人工呼吸,血液浄化などの集中治療を行った。第2病日には意識清明となり,本人より市販のトラベルミン®を100錠内服したことを聴取した。その後,腎不全に陥ったが改善し第17病日に軽快退院となった。トラベルミン® による中毒例の報告は現在までに多くないが,近年インターネットの自殺サイトなどで服薬自殺が可能な薬剤として紹介されており,誰でも容易に購入可能であるため今後増加してくる可能性があり,中毒症状および治療法についての十分な認識が重要である。
著者
後長 孝佳 服部 友紀 安藤 雅規 波柴 尉充 富野 敦稔 宮部 浩道 加納 秀記 津田 雅庸 平川 昭彦 武山 直志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.546-550, 2015-06-30 (Released:2015-06-30)
参考文献数
10

近年流通している危険ドラッグの主な成分は,合成カンナビノイドと合成カチノン系化合物である。今回,合成カチノン系化合物を含有する「Sex Bomber」を繰り返し飲用し,1カ月間に2度,同様の重篤な症状を呈した急性中毒例を経験した。症例は30歳代男性。3週間前から「Sex Bomber」を飲用していた。興奮・異常行動を認めるようになり,救急搬送された。来院時,興奮・不穏・頻脈・発汗の他,乳酸アシドーシス,横紋筋融解,肝障害,急性腎障害を認め,多臓器障害の状態であった。退院後も「Sex Bomber」の飲用を続けており,1カ月後,再び前回と同様に多臓器障害の状態で搬送された。2回とも経過中にDICに陥ったが集中治療管理により,約1週間で退院となった。合成カチノン系化合物は,組織移行性が高く作用が強力であるため,発症は急速かつ激烈である。急性中毒症例では多臓器不全をきたし死亡する例も散見されており,これら化合物に対する知識に基づいた的確な管理が必要である。
著者
宮部 浩道 後長 孝佳 安藤 雅規 波柴 尉充 都築 誠一郎 田口 瑞希 植西 憲達 武山 直志
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.523-526, 2015-11-01 (Released:2015-11-06)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

水中毒に起因する低Na血症は,多量の利尿を引き起こし急激な血中Na濃度上昇をきたすことがあり,osmotic demyelination syndrome(ODS)を惹起する危険性がある。我々は水中毒に伴う低Na血症の急激な補正を防ぐ目的で,大量の自由水輸液を施行した症例と酢酸デスモプレシンと3%高張食塩水を併用した症例を経験した。いずれも血中Na濃度上昇は12 mmol/l/day以下に制御可能であった。水中毒に起因する重症低Na血症の治療に際し,酢酸デスモプレシンと3%高張食塩水を使用した治療法は,有効かつ安全であると考えられた。
著者
末廣 吉男 森谷 裕司 山口 京子 夏目 恵美子 井上 保介 武山 直志 中川 隆 野口 宏
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.375-379, 2010-06-30 (Released:2023-03-31)
参考文献数
8

近年,臨床検査関連団体や学会が認定する専門臨床検査技師制度の普及により,専門分野に特化した臨床検査技師が増加している。しかし,救急医療に関連した専門臨床検査技師制度の整備は遅れている。当院では,緊急検査担当の臨床検査技師が救急蘇生外傷治療室にて検査関連業務を実施することで,医師による検査依頼から結果確認までの時間(TTAT:Therapeutic turn around time)を従来と比べ約22分間短縮した。救急蘇生外傷治療室における初療時検査は,病態把握や治療方針決定のために実施されるものであり,医師が最も必要としている検査結果を推測し,的確な検査項目について結果報告することが重要である。これらを実践するため,救急医療に携わる臨床検査技師にはさまざまな疾患に対応するための幅広い臨床検査知識や技術のほかに,救急医療の基礎知識および技術の習得が必須であると考える。救急医療における臨床検査技師の専門性とは,積極的に救急医療の現場へ介入して検査関連業務を実施し,検査依頼から結果確認までの時間を短縮するとともに,医師や看護師が本来業務に特化できるように業務支援することであると考える。
著者
野口 宏 武山 直志
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

集中治療室に敗血症にて入室患者の、血中一酸化炭素(CO)濃度(ガスクロマトグラフィー)、単球中ヘヘムオキシゲナーゼI蛋白量(フローサイトメトリー)、血液中酸化ストレス度(分光高度計)、炎症性サイトカイン(ELISA)等を測定することにより、侵襲による酸化ストレス、ヘムオキシゲナーゼI発現、CO濃度の相関を検討した。その結果、ヘムオキシゲナーゼI蛋白発現と血中CO濃度間に正の相関が認められた。COはNOとともにグアニールサイクラーゼ活性化による血管拡張作用を有するが、それ以外に抗炎症作用も有する。内因性COの起源は、その代謝経路からヘムオキシゲナーゼ系由来と推察されていたが確証はなかった。今回の結果は、内因性のCOとヘムオキシゲナーゼ経路との関連性を強く推察するものである。次にヘムオキシゲナーゼ1を調節する要因として酸化ストレスをはじめとした生体侵襲が重要視されている。今回、APACHE IIによる重症度スコアー、酸化ストレス度、およびヘムオキシゲナーゼI発現間に正の相関が認められた。この結果は、強い侵襲が生体に加わり酸化ストレス度が増加した状態下で、抗炎症作用を有するヘムオキシゲナーゼ1蛋白質が増加している可能性を強く示唆する。ヘムオキシゲナーゼIの上昇しない敗血症患者は予後が悪いことも今回の検討から明らかになっており、ヘムオキシゲナーゼI-CO系は生体防御系として重要な役割を果たしている可能性が示唆された。